予想以上に伸びが鈍化
11月14日に発表された10月の米消費者物価指数は、全般に価格の低下傾向が見られ、特にコアCPIでは前月比0.2%上昇にとどまった(前月は同0.3%)。前年同月比でも4.0%上昇だった(前月は4.1%上昇)。
総合CPIも、ガソリン価格が下落したことから、9月の前月比0.4%上昇から同横ばいと伸びが縮小した。前年同月比では3.2%上昇で、これも前月の同3.7%上昇から伸びが鈍化した。総合CPI、コアCPI共に事前の予想を超えて伸びが鈍化したことで、金融市場では、2022年3月からの米FRBによる積極的な金融引き締め・利上げが一段落するとの見方が強まった。また、米FRBが2024年半ばには利下げを開始するとの観測も広がった。
市場の反応~米ドル金利低下
このため、米国債利回りは急落、価格は上昇して、2年債が4.85%、5年債が4.45%、10年債が4.45%、30年債が4.60%で取引を終えた。フェデラルファンド先物市場では、米FRBの追加利上げを折り込む度合いは、ほぼ解消した。利下げ開始は、2024年5月または6月に前倒しされる可能性を織り込み始めている。
ドル金利の低下を受けて、為替では、金利差縮小を理由に、ドルインデックスが105.00近辺から103.98まで急落し1日の下落率では昨年11月以来、最大の値幅で下げた。ユーロドルは、1ユーロ=1.0887ドルまでユーロが上昇し前日比1.8%高で今年8月以来の高値を付けた。ドル円は、151円台半ばから150円台半ばまで、円が買われた。
金利がピークアウトするとの観測から、米国株や新興国株などリスク資産には、大きく買いが入って、S&P500は前日比1.9%高の4,495.70まで上昇した。
利下げ期待は先行しすぎ・・・
今回のCPIで、1980年代以来最も厳しいインフレ高進という事態が、コントロールできるとの見方が広がり、金融市場には安心感にも似た楽観的な雰囲気が出てきている。少なくとも、FRBが事あるごとに言及してきた追加利上げの可能性は小さくなっただろう。ただ、インフレ圧力が、急速に後退し、金利が短期間に低下するというシナリオに飛びつくのは早計ではないか。FRBのシナリオは、インフレ圧力が緩やかに緩和することで、より長い期間、高い水準で金利を維持するというものである。今回のCPIをきっかけに、利下げへの期待が膨らみ、時期も前倒しされる可能性が高まったが、あくまで、市場期待の先行であり、実際には、緩和サイクルが開始されるタイミングは、市場期待よりも遅く、利回り曲線は全般的は低下しながらも急速ではなく、緩やかに低下していくのではないか。