ムーディーズが米国債務格付けをネガティブウオッチに

格付け「AAA」は維持するものの、見直しの対象に

格付け会社ムーディーズは、11月10日、米国(連邦政府)の長期発行体格付けおよびシニア無担保格付けを最高位のAaa(トリプルAに相当)で維持するものの、格付け見通しを「ステーブル」から「ネガティブ」に引き下げると発表した。米国の高い信用力と経済力に裏打ちされており、最高位の格付けは変わらないが、財政赤字の膨張には歯止めがかかっていないことや、米国議会内で政治的二極化が進んでいることで、財政再建計画が議会でまとまらないリスクが高まっていることを理由として挙げた。

議会では、上下両院で、11月17日に期限を迎えるつなぎ予算について、さらなる予算措置で合意改正できるかが問題である。2024年には大統領選を控えており、政治的二極化の強まりは、妥協を許す余地を狭め、2大政党の意思決定を難しくしている。議会共和党は、下院議長すらなかなか決められなかっただけに、先行きの不透明感が債券市場にも影を落とすことも考えられる。

ムーディーズは通常、格付け見通しをネガティブとした場合、それから1年半~2年の期間内に格付けを変更するかどうかを判断する。ムーディーズは、米国の債務格付けを最高位に維持しているが、フィッチは今年8月にトリプルAから「AAプラス」に1段階、格付けを引き下げた。S&Pは、2011年に最高位の『AAA』から1段階、格付けを引き下げて、現時点でもそれを維持している。

アディエモ財務次官は、声明を発表し、「ムーディーズによる格付け見通しのネガティブへの引き下げに同意しない」とし、「米国債や財務省証券は世界有数の安全かつ流動性の高い資産だ」と述べた。このニュースは、ある程度、市場には織り込まれていると考えられるが、長期的には、米国の資金調達コストの上昇や利回りの上昇を通じて、米国経済への負担になるだろう。民間企業の長期資金調達にも影響はあるだろう。

ところで、日本は米国とは段違いに債務比率が高い。日本の債務格付けも注意しておかなければならないのではないか。

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