注目されるラガルド総裁
ラガルドECB総裁は、政策金利(中銀預金金利)を現行の4%で維持すれば、十分にインフレを抑制できるとの考えを明らかにした。ただし、エネルギー価格動向には注意を払う必要があり、インフレ圧力が再燃すれば、再度の利上げを含めた措置を検討することを留保した。
ECBは、2022年7月から立て続けに金利を引き上げ、金融引締めを行ってきたが、10月政策委員会会合で、政策金利を据え置いた。ラガルド総裁は現行の4%で政策金利を長く続ければ、インフレ率を目標とする2%に戻すことに十分な効果があるとの考えを始めて明確にした。
背景には、ユーロ圏の総合インフレ率が、10月に2.9%と約2年ぶりの水準に低下したことがある。9月は同4.3%だった。ピーク時よりは落ち着いてきており、インフレ圧力の緩和傾向に期待が持てる状況になってきたとの判断があるのだろう。ただ、不透明な要因として、中東での紛争があり、状況が悪化して石油価格を押し上げることがリスクファクターである。
もうひとつはユーロ圏の経済状況が悪化していることである。第3四半期の域内総生産GDPは前期比0.1%減少した。域内最大の経済規模を持つドイツの第3四半期の域内総生産GDPも前期比0.1%減少した。製造業を中心とするドイツ経済の不調は、際立ってきており、ユーロ圏全体でのリセッションの可能性が高まっているといえる。
なお、利下げを検討する可能性をたずねる質問に対しては、10月26日の記者会見では「時期尚早」だと一蹴したが、10日は「今後数四半期は」いかなる利下げもないと明言して「十分に長く」金利を据え置く考えであることを強調した。
なお、量的引き締めを加速させるかについての質問に対しては、ECBが保有債券を積極的に売却することは現時点で考えていないと述べた。ただ、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)で購入した債券の再投資をどのように扱うかに関しては、いずれ、ECB理事会で議論することになると付け加えた。