11月FOMCでは、政策変更せず

政策金利をさらに引き上げるべきか?

11月1日まで2日間にわたって開催されたFOMCでは、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.25-5.50%のまま据え置くことを決定した。これで、前回9月に続いて、2回連続のFOMCで、利上げを見送ったことになる。インフレ圧力が根強いことは認めながらも、これまでの金利引き上げの効果やこのところの市場金利の上昇により米国経済にはブレーキがかかり始めている可能性があり、過度な引き上げにならないよう見極める段階にあるとの判断であろう。

FOMCの声明でも、もう1回の利上げカードは温存しながらも、最近の金融市場における金利の上昇により、追加利上げの必要性が低下する可能性に触れ、引締めサイクルの終わりが近づいていることを示唆した。また、パウエル議長も、記者会見で、「われわれが答えを求めているのは『さらに引き上げるべきか』という問いだ」と述べる一方で、過去40年で最も積極的に進めた金融引締めのサイクルが終了した可能性があるとの見解を示した。

前回9月のFOMC会合以降に、経済の状況が予想よりもやや上振れ気味であることについて、タカ派的な解釈をすれば、利上げをするという判断もなかったわけではない。インフレ率は2%としているFOMCの目標値を大きく上回っている。第3四半期の実質GDP伸び率も、約2年ぶりの高い水準にあり、米国経済の勢いに今のところ陰りはない。それでも、なお、利上げの判断に至らなかったということは、FOMCは当面の様子見が妥当であるとの判断に傾いているのであろう。

そうなると、気がかりな点は、9月FOMCで公表された金利予測分布図(ドット・プロット)で、今年内にさらにもう1回の追加利上げが見通しとして示されていたことである。これに関し、パウエル議長は、特定の時点での個々の当局者の個人的見解を反映したものに過ぎず、またドット・プロットは、それが公表された会合とその次の会合までの3カ月間に有効性が低下すると考えられるとして、ドット・プロットと実際の政策判断の整合性については、拘泥しない考えを示した。

パウエル議長は、繰り返し、FOMC会合ごとに適宜、判断を下すと述べている。次回FOMCは12月12~13日に予定されている。それまでには、雇用統計やインフレ統計などの主要データも発表される。加えて、中東情勢やウクライナ情勢など、地政学的リスクの動向からも影響があるかもしれない。なによりFRBは、未だにインフレ率の目標値への収斂について、確信は持てないでいることは間違いない。当面、追加的引締めカードを温存しているのは、それが最大の理由である。

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