9月の米国消費者物価指数 ~ 依然として高い水準の伸びを維持

インフレ圧力は容易に緩和せず

10月12日、米国労働省が9月の消費者物価指数を発表した。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは、前月比0.3%上昇と前月と変わらず、前年同月比では4.1%上昇して、2021年以来の低い伸びを示した。8月は同4.3%上昇だった。総合CPIは前月比0.4%上昇と事前予想をやや上回り、前年同月比では3.7%上昇と8月と変わらなかった。

9月には、住居費や自動車保険、娯楽サービスでの価格上昇が目立った。住居費は、総合CPIの約3分の1を占めるが、9月の前月比ベースでの上昇率の半分余りを占めた。ホテル宿泊費が過去2年で最大の伸びとなったほか、帰属家賃も上昇ペースが加速し、今年2月以来の高い伸びだった。一方で、中古車は大幅な低下、また、自動車部品は過去最大の下げとなった。

住宅とエネルギーを除いたサービス価格は、前月比で0.6%上昇し、約1年ぶりの高い伸びを示した。力強い雇用市場が、賃金の上昇を通じて、消費者の需要を支え、サービス価格を押上げているという構図が、改めて浮き彫りになった。こうした状況が定着することは、インフレ率を目標の2%に抑え込みたいFRBにとっては望ましくない。米FRBは、雇用市場の堅調さが、賃金上昇インフレに繋がることを懸念せざるを得ない。賃金の上昇率は年4%を超えてこれが定着している。これだけの賃金上昇が続けば、物価全体にも上昇圧力として負の影響を与える可能性は高い。9月のFOMC会合では利上げを見送ったが、米FRBは11月または12月のFOMCで0.25%幅での追加利上げに動く可能性は高まったと市場では受け止めるだろう。

9月雇用統計の振り返り

先週10月6日に米国労働省から発表された雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比33.6万人増、前月も速報値の18.7万人増から22.7万人増に上方修正された。いずれも事前予想を大幅に上回る伸びとなった。今年1月以来の大幅な増加で雇用市場が堅調であることを改めて印象付けた。雇用者数は幅広い分野にまたがって伸び、娯楽・ホスピタリティー、ヘルスケア、専門職・ビジネスサービスなどホワイトカラーの求人が急増した。米FRBによる追加利上げの可能性は強まった。金融市場では米国債利回りが急上昇し、特に長い期間の債券が売り込まれた。2-10年債スプレッドは▲0.25%と平坦化した。国債利回りの急上昇は、消費者や企業の借り入れコストを押し上げ、景気にとっては、マイナスの影響となる恐れがある。

家計調査に基づく失業率は3.8%と前月から変わらなかった。平均時給は前月比0.2%上昇で、前月からの伸びは変わらなかった。前年同月比では4.2%上昇と、2021年半ば以来の低い伸びにとどまった。週平均労働時間は34.4時間で前月と変わらなかった。全体の労働参加率は前月と同じ62.8%だった。

今回の雇用統計は、雇用市場が堅調であることを示唆している。雇用の増加ペースは、今年に入って緩やかに鈍化してきていたが、堅調であることは間違いなく、賃金の伸びが家計支出を支え、消費を維持してきた。一時、見られた労働需給のミスマッチも、ここ数カ月の労働参加率の改善もあって均衡状態を維持している。こうなると企業売上高や業績もそれほど悪化することはないかもしれない。

ただ例年、9月の雇用統計は、夏のホリデーシーズンを終えて、娯楽・ホスピタリティー産業でレイオフ圧力が強まる傾向やBack to School シーズン(新学期開始)に伴う雇用増の影響を調整するテクニカルな必要から、統計の信頼感がいまひとつの印象はある。11月1日のFOMCまでには、次の10月雇用統計は間に合わないが、このあたりをどう見るかは今後のFRB高官の発言に注意を払っておきたい。

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