緊迫する中東情勢 市場への影響は?

10月7日に始まったイスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が続いている。イスラエル政府が発表したイスラエル側の死者数は攻撃開始以降900人余りに達した。一方、パレスチナ側でも600人を超える死者が出たと報じられている。

バイデン大統領が語ったところでは、米国人にも11人の犠牲者が出ており、ハマスの人質になっている米国市民が複数いる可能性が高いという。

市場では、産油地域である中東での紛争勃発で、原油価格が上昇している。ただ、事態がどれほど長期化するは不明であろう。

9日は米国がコロンブスデーの休日で、債券の現物の取引は行われなかった。ただ、国債先物はリスク回避行動から買われ、利回りが低下した。なお、ジェファーソンFRB副議長やローガン・ダラス連銀総裁が、長期金利の上昇による景気抑制効果を認め、一段の金融引き締めに慎重な姿勢を示す発言をしたことも債券を支えた。6日に発表された9月米国雇用統計で非農業部門雇用者数が事前予想を大幅に上回る伸びを示したことで米国債利回りは急上昇していたが、その反動もあるだろう。

為替相場では、ドル・円は149円半ばから、米ドル金利の低下に伴い断続的に下げ148円50銭台をつけている。イスラエル中央銀行が通貨シュケルの下落を防ぐため、最大で300億ドル分の外貨を市場で売却、シュケルを買い支えると発表したことも、ドル売りの連想を誘った。同中銀による外貨売却は初めてのことである。今回の戦闘が始まってから、シェケルは3%程度下落、1ドル=3.92シェケルを付けていた。同中銀はまた、スワップにより最大150億ドル相当のシュケルの流動性を供給すると表明した。これは同中銀が市場でシュケルを買いすぎるとシュケルの流動性が不足し、資金不足に陥らないようにするためである。

イスラエル中銀は声明を発表して、「シェケル相場のボラティリティーを和らげ、市場の適切な機能維持に必要な流動性を提供する」と述べて、過度な変動には市場に介入する姿勢を明確にした。戦闘の早期収束を望むが、長期化したり、対立が先鋭化するとこの問題は中東に飛び火して、厄介な問題となる。インフレにも影響しそうな問題になりかねない。注意しておきたい。

関連記事