中国では10月1日は、建国74周年を記念する国慶節の祝日だった。中秋節の9月29日から、丸1週間は大型休暇となる。そこで注目されるのが、消費が拡大傾向を見せるのか?観光需要がどれだけ戻るかということである。
国営中央電視台(CCTV)が、当局のデータを引用して報じた内容によれば、国内旅行者数は9月29日-10月1日の3日間で3億9500万人に達したという。またこの3日間で、観光収入は3422億4000万元(約7兆円)と、前年同期間比で125%増加した。旅行者数も76%増加と、新型コロナウイルス対策で厳しいロックダウン措置を受けていた昨年対比では、力強い旅行需要の回復が見られた模様である。また、中国の主要小売店やレストランにおける3日間の売り上げは前年同期比8.3%増、主要オンラインプラットフォームを通じたホテル・観光予約が20%余り増えたとも伝えた。
中国政府が目標として掲げる2023年の国内総生産成長率は5%前後である。しかし、その目標達成を実現できるかどうかは、エコノミストたちの見解も分かれている。要因としては、不動産市況が依然として低迷していることや、企業部門が広範に債務問題に巻きこまれていること、消費動向が脆弱で拡大の持続性が疑われることが挙げられている。
最大のリスクは、不動産開発業者の経営危機の影響で、短期的なリスクは最も大きいだろう。そして、不動産セクターへの圧迫は今後も強まると懸念され、短期間での問題解消は望めないという点が悩ましいところである。香港に本拠を置く大手銀行のHSBCは先週、2023年の成長率見通しを5.3%から4.9%に下方修正した。
たしかに、中国経済指標の一部には、8月で底入れしつつある可能性を示唆するものも出てきた。輸出は8月も減少だったが、マイナス幅が前月から縮小したうえ、8月の製造業購買担当者指数(PMI)も7月に比べて改善し、活動拡大・縮小の境目である50に近づいた。
中国国家統計局が、30日に発表した9月の中国の製造業購買担当者指数(PMI)は50.2だった、8月の49.7から上昇し、活動拡大・縮小の境目となる50を上回った。6か月ぶりの回復となる。サービス業と建設業を対象とする非製造業PMIも51.7と、8月の51から上昇した。
また、27日発表された8月の工業利益は前年同月比17.2%増加となった。前月7月まで減少が続いていたが反転し、今年最大の伸び幅となった。ただ1-8月累計では前年同期間比11.7%減と引き続き厳しい。工業生産は、8月に前年同月比4.5%増加した。生産者物価指数(PPI)は前年同月比3%低下。7月の4.4%低下からマイナス幅が縮小した。輸出の減少傾向もマイナス幅が縮小した。また、与信残高も増加し、資金需要が底を打った可能性を示唆している。
中国政府は、8月以降、経済成長へのコミットを鮮明にし、金融政策は断続的に緩和されたほか、地方政府には、インフラ投資のための特別債の借り入れ枠を拡大した。これら最近実施した景気刺激策は、消費者の信頼感や企業の景況感の改善に繋がった模様である。ただ、不動産開発業者の経営不安や不動産市況の低迷、外需の先行き不透明さなど、中国経済の先行きは不透明なままである。国内総生産の成長率見通しには、厳しい見方が根強く、政府が設定した5%前後の目標に未達となるのではないかとの懸念は強い。