7月経済指標は軒並み弱い
8月15日に中国国家統計局が発表した7月の小売売上高と工業生産、1-7月の都市部固定資産投資累計は、いずれも前月を下回って経済成長の鈍化を示唆した。都市部の失業率も、上昇した。若年層失業率に至っては、統計の発表さえ控えられた。内容が刺激的すぎて公表できないのかと、下衆の勘ぐりをしてしまうほど唐突感は否めない。新規融資も7月には14年ぶりの低水準に落ち込んだ。輸出も減少している。
翌16日に発表された7月の新築住宅価格指数は、主要70都市のうち49都市で前月比下落した。上昇は20都市にすぎずで、1都市が横ばいだった。下落の都市数は前月の38から11都市増えたことになる。直轄市である天津市のほか、主要都市である広東省広州市や深セン市などでも価格は下落した。経済活動は低調である上に、不動産開発業者の資金繰り難や開発プロジェクトの進捗に対する懸念は、消費者の買い控えに繋がっている。新規の住宅着工や建設プロジェクトへの需要にも、当面、回復が見込めないだろう。中国がデフレスパイラルに陥っているのではないかとの指摘も出ているほどである。
不動産セクターの状況が悪化
不動産の販売不振は深刻化しており、中国恒大集団や碧桂園といった大手不動産会社され経営危機が囁かれている。中国有数の不動産開発業者である碧桂園が利払いを履行できなかったという事実は、市場では衝撃的に受け止められている。状況が悪化すれば、中国の金融システム全体に波及しかねないリスクにもなる。
中国政府は、ゼロコロナ政策解除後も不動産市場の回復が遅々として進まないことを受けて、開発事業者への金融支援を延長したり、特別な配慮をするよう政策を打ち出しているが、即効性は期待できそうもない。今後は、これまで手を差し伸べていなかった不動産セクターへの救済策と消費喚起策を講じる必要があると考えられる。
求められる早期の政策出動
不動産セクターは多額の債務を抱え、流動性にも窮している。これまで救済策では多くの時間が費やされ、不動産市況の回復が遅れれば遅れるほど、コストは高くつく可能性が高い。消費支出は伸びておらず、財布の紐は堅いままである。消費者に如何に消費のインセンティブを与えて家計部門の消費需要を刺激することは、中国経済の成長率底上げに、喫緊の課題となるだろう。