統計局が4月の主要経済指標を発表
5月16日、中国国家統計局は、4月の主要経済指標を発表した。いずれも内需の回復が期待どおりではないことを示唆しており、中国経済の回復に時間がかかることが危惧される。国家統計局も、「環境は、国際的に引き続き複雑かつ厳しい上に、内需はなお不十分」で「回復に向けたけん引役はまだ強くない」との分析を示した。中国の個人消費や工業生産の伸びが予想に反して弱まっており、景気回復の勢いが鈍りつつあることが示された。
鉱工業生産
鉱工業生産は、4月に前年比5.6%増加した。ただ比較の対象となる昨年4月は、上海市をはじめとする主要都市でのロックダウンが実施されており、増加幅はもっと大きくなると予想されていた。生産高の伸びは3月の同3.9%から加速して、伸び率では2022年9月以来の大きさとなった。
粗鋼生産
粗鋼生産は、4月に前年同月比1.5%減、前月比3.2%減だった。需要が弱いことが原因だが、急激な価格下落を受け、中国鋼鉄工業協会(CISA)が鉄鋼メーカーに対し、安定したキャッシュフローを確保するため、生産を削減するよう求めたことが大きく響いた。鉄鋼メーカー247社のうち、4月末時点で利益が出ていると回答した企業は26.41%に過ぎなかった。
小売売上高
小売売上高は、4月に前年比18.4%増加したが、これも前年同月比では20.0%増を上回ると予想されていた。伸び率は3月の同10.6%を大幅に上回って、2021年3月以来の高水準をつけた。
固定資産投資・不動産投資
今年1-4月の4ヶ月で、固定資産投資は前年比4.7%増加した。1-3月は5.1%増だった。1-4月の不動産投資は前年比6.2%減少し、1-3月の5.8%減から一段と落ち込んだ。
失業率
4月の都市部失業率は5.2%と、3月の5.3%から低下した。一方で、若年層の失業率は20.4%に上昇した。3月は19.6%だったが、一段と上昇し、過去最悪だった2022年8月の19.9%を大きく上回った。中国では、労働力人口は減少に転じているが、今後、労働力のコアとなる若年層を吸収することができないでいる。今年大学を卒業する人口は約1,158万人と見込まれるが、これだけの数を雇用市場が吸収できるのか課題は残る。統計局の報道官は、「若者の雇用安定・拡大に向け一段の取り組みが必要だ」と明言した。
石油生産・精製量
原油生産は4月に1,730万トンと前年同月の1,700万トンからほぼ横ばいだった。天然ガス生産は前年比7.0%増の189億立方メートルだった。石油精製量は、4月に前年同月比18.9%増の6,110万トンとなり、過去最高だった3月に次ぐ2番目の水準を維持した。国内燃料需要の回復と夏の旅行需要に備え在庫水準を積み増す動きが原油需要を支えた。昨年終盤の新型コロナウイルス規制解除以降、中国国内の燃料需要回復が続いていることから、製油所稼働率も、高水準を維持している。また、5月初めの労働節の連休に、コロナ禍での見送りから大幅反動増となった家族旅行の需要急増も、燃料需要を大きく押し上げている。
市場の反応
統計発表後の株式市場は、それほどネガティブには反応しなかった。CSI300指数は、ほぼ横ばいから子甘く推移した。中国人民銀行による金融緩和や中国政府の景気下支え策への期待の声は根強く聞かれるが、これまでの動きから推測するに、政府は目立った対応策を打つ構えを見せていない。焦れる展開が続くだろう。