政策金利は4.50%に
5月11日イングランド銀行BOEは金融政策委員会MPCを開催し、政策金利を0.25%引き上げて、4.50%とすることを決定した。これで、12会合続けての利上げ実施となる。
MPCは、2月時点では、天然ガスなどエネルギー価格の下落を受けて、インフレ率が2023年末までに4.0%程度まで減速する見通しを示していた。しかし、エネルギー価格の下落によるインフレ圧力の緩和は、食品価格の急騰によって相殺されてしまい、英国のインフレ率は3月に前年同月比で10.1%上昇と危険な状況になった。さすがに、年率2桁の物価上昇率となったことを踏まえると、今回、利上げを見送るとの判断にはできなかったとみられる。
今後の焦点は、今回の利上げが英国における政策金利引き上げの最終回になるかどうかである。ロンドンの金融市場では、一段と政策金利が引き上げられるとの予想は多く、政策金利が5.00%に達するとの味方も根強い。短期金融市場では、5.00%水準への利上げを織り込む形でイールドカーブが形成されている。
インフレ圧力は強い
依然として高騰を続ける物価と賃金などの統計に照らせば、英中銀が今年夏まで、利上げを継続することは十分にあり得るシナリオである。BOEが米FRBに続き、利上げ停止を視野に入れているのかどうかにも注目が集まる。今後のインフレ動向次第と言ってしまえばそれまでだが、BOEが2025年までの中期インフレ見通しをどのように修正するかは、ひとつの手掛かりとなるだろう。
ベイリーBOE総裁はMPC後の会見で、「インフレ率の2%目標回帰に向けて最後までやり遂げる」と強い決意を披露した。MPC後に報道されたインタビューでも、ベイリー総裁は、インフレが弱まりさえすれば、金利水準自体は、利上げを休止する地点に近づいていると発言した。しかし、それを正当化するエビデンスは、まだ出てきていないとも付け加えた。
ただ、インフレ見通しは、楽観的ではない。今年末までに5.1%に低下するとの予想が公表されたが、インフレの鈍化幅は2月時点の予想である3.9%よりも小幅となり、2025年初めまではBOEが目標とする2.0%に戻らない見通しが示された。
次回MPCは6月
政策判断を難しくしている要因は、足元の経済動向もある。英政府統計局が12日に発表した英国の国内総生産GDP(3月)は前月比0.3%減だった。第1四半期は前期比0.1%増と、前四半期と並ぶ伸び率にとどまった。英国経済が回復に向かって勢いを取り戻すとの楽観的な見方が強まっていたが、現実はより厳しいということである。物価上昇と金利上昇により、消費者は慎重な態度になってきている。英国内でのストライキも経済活動にマイナスの影響となった。次回MPCは、6月22日に開催される。インフレの動向が緩和に向かえばとの条件はつくが、次回会合では、利上げ停止に動く可能性も出てきたのではないか。