習近平政権3期目のスタート

全国人民代表大会(全人代)が閉幕~習近平政権の人事固まる

全国人民代表大会(全人代)は3月15日閉幕した。注目された人事も、粛々と決定され、驚くような人事は、なかったと言える。まず10日の全体会議では、習近平国家主席・国家中央軍事委員会主席の3選を決めた。昨年10月の第20回共産党大会で、異例となる党総書記としての3期目の続投を決めた習氏は、これで、国家主席・国家中央軍事委員会主席としても3期目に入ることが正式に固まった。国家主席・国家中央軍事委員会主席の任期は連続2期で10年までとされていたが、2018年には憲法が改正され任期制限の規定が撤廃されていた。なお、投票では、有効投票2,952票のうち3選への反対は0票だった。習氏は「社会主義現代化強国の建設のため努力、奮闘する」ことを宣誓した。

11日の全体会議では、任期を満了して退任する李克強首相の後任に、共産党の序列では2位となった李強氏を選出した。李強氏は、昨年まで上海市トップを務め、国民からは4月の厳しいロックダウンを率いた指導者として受けは良くない。加えて、副首相など中央政府の要職を経験したことはなく、いきなり首相に抜擢するという異例の起用である。李強氏は習近平国家主席の腹心と言われ、浙江省トップを務めた際に幹部として仕えて信任を得たといわれている。李氏は、習近平主席の主導権が強まった新指導部で、政策遂行の実務を担う。

李強氏の首相選出投票は、賛成2936票、反対3票、棄権8票だった。李強氏は「忠実に職責を果たし社会主義現代化強国の建設のため努力、奮闘する」と宣誓した。

その他には、国家副主席に韓正副首相、副首相には丁薛祥・共産党政治局常務委員のほか張国清氏、劉国中氏、何立峰氏が選出された。国防相には李尚福・中央軍事委員会委員が選出された。李氏はロシアの兵器輸出企業からの戦闘機や装備品の購入を巡り、2018年に米国からは制裁対象リストに入れられた人物である。国家安全相は陳一新氏、公安相は王小洪氏の留任が決まった。秦剛外相と賀栄司法相も留任となった。なお、中国人民銀行の易綱総裁と劉昆財政相も留任された。両氏はそれぞれ65歳と66歳で、公式には引退年齢とされている65歳に達している。慣例に従えば、退任となるはずで、この留任は予想外だった。

三期目の習近平政権では、中国経済の構造的な問題への対応と、長期的な競争力の確保に向け必要な改革を行えるかであろう。また、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた中国経済をどのように立て直し成長軌道に戻すのか、緊張が深まる米国との外交関係をどうしていくかも重要な課題となる。指導者メンバーは多くが留任となり、親習近平派の側近で固めて、大幅な変更がなかったことも特徴だろう。中国政府は今年の経済成長目標を5%前後に設定した。昨年の成長率は3%にとどまっている。重要な経済関連ポストに留任が多いのは、信頼性と安定を重視したためと解釈されている。

金融政策では、中国人民銀行が17日、預金準備率を0.25ポイント引き下げることを発表した。実施は、3月27日からで、昨年12月に0.25ポイントの預金準備率引き下げを行って以来の措置となる。金融緩和の一環で、新型コロナウイルス禍や不動産不況から徐々に回復しつつある国内経済を下支えすることが狙いである。人民銀は「合理的かつ十分な流動性を維持」し、マネーサプライ(通貨供給量)の伸びを名目経済成長率に沿ったものにするよう目指すと説明した。ただ、資金を「洪水」のように市中にあふれさせるようなことはしないとしており、過剰流動性によるバブル的な資産価値の上昇には注意を払っていることだけははっきりしている。

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