中国共産党新指導部の経済運営に市場は未だ懐疑的
中国共産党第20回党大会が10月23日に閉幕した。最終日の10月23日には、第20期中央委員会第1回総会(1中総会)が開催され、そこで最高指導部を構成する政治局常務委員(7人)と、政治局員(24人)が選出された。新最高指導部となる常務委員は、習氏のほか6名がいずれも習氏の側近か信頼関係にあると言われる人物で、習派で固めたといえる顔ぶれとなった。また、政権のナンバー2には、上海市トップだった李強党委員会書記が選任された。ナンバー2は通例では、首相を兼任する。副首相を経ないで首相となることも異例で、この人事は、中国ウオッチャーにも驚きをもって受け止められた。
破られた「七上八下」と共青団の敗北
今回の中国共産党大会の特徴の一つは、党大会時点で68歳以上なら引退、67歳以下なら留任という「七上八下」と呼ばれる慣例を破った人事が多く見られたことである。現在69歳の習近平氏の再選はもちろん、王毅外相(69)や党中央軍事委員会の張又侠副主席(72)が中央委員に残ったこともそれに該当する。習氏が長老や他派の圧力を跳ねのけて人事を強行できるほど力を持ったことを意味するだろう。また、68歳以上の中央委員が習総書記以外にも残ったことで、習氏だけが例外ではないことを示す意味もあるかもしれない。
また、最高指導部である政治局常務委員から外れた3名はいずれも「共産主義青年団(共青団)」の出身という共通点があることも注目される。李克強首相や汪洋人民政治協商会議主席は年齢としては67歳で、最高指導部の政治局常務委員に再任される条件は満たしていた。しかし、最大24名からなる中央委員の資格さえも失った。胡春華副首相に至っては、中国共産党ウオッチャーたちから次期首相候補にも挙げられ、将来は国家主席の可能性すらあると予想されていた人物だった。しかし、中央委員にもとどまれなかった。今回の人事は、習氏が共青団出身者を指導部から排除しようとする長年の取り組みが成功した結果といえるだろう。共青団はかつて強大な権力を持つ勢力だったが、政治的な影響力は失うほどに衰退したと言わざるを得ない。
共青団が完全に敗北し、反対勢力は弱体化した。習氏は政治的な権力を掌握し、自らの望み通りに政策を実行できるようになったといえるだろう。党大会では党規約の改正案が採択され、習近平国家主席の党の核心としての地位と、政治思想の指導的地位を固める「二つの確立」のほか、「共同富裕」社会の目標達成が盛り込まれた。
経済政策は誰が主導するのか?
経済的には、経済通と言われた人材が次々に指導部を離れたことが懸念される。李克強首相は2期10年の任期制限を踏襲し首相職を来年3月に退くことを表明していたがやはり続投はなかった。習氏の経済ブレーンを務めてきた劉鶴副首相(70)、中国人民銀行の易綱総裁(64)、劉昆財政相(65)、銀行保険監督管理委員会の郭樹清主席(66)らが、中央委員または中央候補委員から外れた。
来年3月には、引退することが決まった李克強首相は、先週26日に国務院常務会議を主宰し、第4四半期に経済安定と需要喚起を図ることを表明した。27日には、国務院が首相のコメントとして声明を発表し、有効需要不足に対処し、消費を拡大する措置を講じることを表明した。ただ、新指導部による独禁法やデータ管理など諸規制の実施や新型コロナウイルスの感染抑制のために行動制限が優先されることを懸念する声は多い。不動産市況の改善も直ぐには見込めず、ただでさえかじ取りの難しい中国経済の先行きへの不安はぬぐえない。
中国経済の成長率見通しは、2022年、政府目標の5.5%前後に対して、3.0%台前半に低下している。2023年前半には、さすがに国境を再開すると見込まれているが、2023年~2024年いずれの経済成長も5.0%を下回る予想が増え、厳しい見方が増えている。