香港・中国市場Dairy ~ ドル金利の上昇に加え、欧州エネルギー危機への懸念から、ハンセン指数は約6カ月ぶりの安値水準へ
ハンセン指数 19,452.09 pt (▲0.74%)
中国本土株指数 6,672.42 pt (▲1.03%)
レッドチップ指数 3,623.71 pt (▲1.21%)
売買代金984億4百万HK$(前日1,102億0万HK$)
先週末、発表された8月の米国雇用統計は、雇用市場の強さが改めて確認された。失業率や平均賃金の伸びは事前予想を下回ったが、水準自体は依然として高く、非農業部門就業者数は前月比31万5,000人増加だった。
今回の統計は、次回FOMCで大幅利上げを判断するには、十分な支援材料になりえよう。また雇用市場が堅調であることは物価安定を目指すFRBにとって、人手不足による賃金上昇を通じたインフレ押し上げ要因にもなる。FRBはインフレ抑止を最優先して、景気悪化による失業者増などの経済的なコスト増加はある程度受け入れる姿勢を示しており、金融当局の積極的な利上げはより現実味を帯びてきた。
週明けの株式市場は米国の金融引き締め観測に加えて、欧州のエネルギー危機が深刻化することへの懸念が加わって、悪材料に続落する展開となった。ロシア国営の天然ガス会社ガスプロムが欧州向けパイプラインの再開を延期すると発表、欧州経済が物価上昇とリセッションが同時発生するスタグフレーションに見舞われるとの懸念が拡大した。欧州のガス価格の指標となるオランダTTFは前営業日比30%強上昇する場面もあった。また為替相場で、ユーロが対ドルで売られ1ユーロ=0.9900ドルを割り込んだ。これは、2002年12月以来のユーロ安水準である。今週8日に開催されるECB政策理事会では大幅利上げを検討するとみられているが、為替相場でのユーロ先安観はむしろ強まっている。
中国では感染対策のための行動制限の期限延長が相次いで発表されだことも株式市場の重石となった。住民2,100万人を抱える四川省の成都市では、7日まで大規模検査を延長することを発表した。南部・深圳市でも行動制限が継続されるなど中国全域で程度の差はあれど行動制限を強いられる地域が拡大している。10月の共産党大会を前に地方当局がどのような対策を打ち出すのか関心を払っておくべきだろう。
5日の香港市場は3日続落し大幅安、国内外の悪材料から売りが先行し一時2%安、終値ベースで3月15日以来、実に6カ月ぶりの安値水準を付けた。取引時間中に発表された8月の中国財新サービス業は55と市場予想を上回るも、前月から低下。足元8月の中国の景況感指数は、中国政府による景気対策への期待感は根強いものの、景気減速が強く警戒されている。
ハイテク比重の高いハンセンテック指数は前日比1.92%安と自動車関連銘柄が連日の大幅安となった。吉利汽車(0175)は7.0%安、新興EVメーカーのNIO(9866)は6.8%安、自動車メーカーの小鵬汽車(9868)は4.1%安、理想汽車(2015)は2.4%安だった。
個別では自動車・電池メーカーの比亜迪(1211)は再び大幅安となり前日比5.8%安となった。先週に続いて米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが14年前に取得した同社株の一部を売却したことがネガティブに働いた。同氏は先月24日時点で、保有する株式のうち133万1,000株を売却し、持ち株比率は20.04%から19.92%に低下した。今月1日には追加で売却が判明し、持ち株比率は18.87%に低下した。
一方、エネルギーや素材銘柄が上昇。アルミメーカーの中国宏橋(1378)は3.4%高、石油販売の中国海洋石油(0883)は2.4%高、ペトロチャイナ(0857)、シノペック(0386)はそれぞれ1.9%高となった。
ハンセン指数に5日付けで採用された、中国の石炭最大手の中国神華能源(1088)は3.8%高、宝飾販売最大手の周大福珠宝(1929)は0.1%安、製薬会社の輪森製薬(3692)は3.2%安、インターネット検索の百度(9888)は1.5%安だった。ハンセン指数の四半期見直しで新たに4銘柄が追加され構成銘柄は73銘柄に増加した。同日付けで中国企業指数(HSCEI)に採用された人工知能開発のセンスタイム(0020)は1.3%高となった。
中国本土株市場は上海総合指数が前日比0.42%高の3,199.91と続伸、中国政府の追加経済対策の効果への期待が下値を支えた。中国政府は、新たに発表した一連の政策措置の詳細を9月上旬に公表すると表明しており、年後半の中国経済落ち込みを回避する狙いがあるとみられている。株式市場は、小安く寄り付いた後、前日終値を挟んで一進一退の動きとなり、方向感を欠いた展開だった。経済対策には、地方政府の裁量拡大への期待も高いようだが、ふたを開けてみるまでは、マーケットには不透明感が残るだろう。