9月7~8日にECB政策理事会開催
8月31日、ECB理事でもあるホルツマン・オーストリア連銀総裁は、ユーロ圏経済で現在進行している過去最高水準のインフレ率を下げることがECBの最優先事項と願いであり、そこに妥協する理由は見当たらないと明言した。同総裁は、ECBがこのミッションに対して、強い決意を持って対処する必要があり、可及的速やかに中立金利への引き締めを実施しなければならないとも述べた。
ECB政策委員会のメンバーの中でも、ホルツマン総裁は金融政策を引き締めることを最優先すべきとの立場によっており、『タカ派』とみられている。最近では、同氏を含め政策委員6人が、来週9月7~8日に開催されるECB政策理事会で前回7月理事会の0.50%幅を上回る利上げを決定すべきとの意見を表明している。一方で、ユーロ圏経済の足取りは重いことから、成長スピードの軟化により物価上昇圧力は緩和されるはずで、0.50%幅を大きく超える利上げは必要がないとの主張もある。理事会の決定が、どちらになるのかに市場の関心が集まっている。
ECBは6月の理事会で資産購入プログラムの終了を決定、続く7月には0.50%幅での利上げを実施した。ECBは、この一連の決定プロセスで、ユーロ圏経済がリセッション(景気後退)リスクに直面するとしても、金融引締めの手を緩めるべきではないと、合意してきたとみられる。ただ、利上げ幅をめぐっては、上述のように意見が分かれている。
「中立金利を超える可能性もかなり高い」
ECBは昨年2021年は、物価上昇圧力を一時的なものと判断し、金融政策を引き締めることに消極的だった。今年も、2月に起こったウクライナでの戦闘による影響を時限的なものといったんは評価し、ECB政策理事会が利上げ開始の必要性で一致し、政策転換を決めたのは6月理事会になった。しかし、結果的にユーロ圏の物価は予想を超えて上昇してしまい、今年5月以降、インフレ率は、ECBのインフレターゲットである年2.00%をはるかに超える8%水準にまで上昇してしまっている。米FRBが昨年11月に政策姿勢を転換したことに遅れること約半年の時間が、インフレ圧力にどう響いてくるかが懸念されるところである。
そして、他の主要中央銀行でも同じ悩みを抱えていることだが、いったいどこまでの利上げを実施すればインフレ高進を抑制できるのかについては、議論百出する状況となっている。6月の時点では、市場はECBの利上げ幅を7月と9月にそれぞれ0.25%ずつ利上げすると予想してきたが、実際にはそれ以上の利上げ幅を実施することになったという事実は受け止めるべきだろう。そういう点では、ホルツマン総裁は、ECBがインフレとの闘いに真剣であることを示すために積極的な利上げを検討するべきとの立場を貫いてきた。その考えには一定の説得力がある。
どちらかといえば、利上げや金融引締めには慎重な姿勢を維持してきたラガルドECB総裁がどのように理事会をまとめるか、注目される。ラガルド総裁は、第3四半期末までに0.25ポイントの利上げを2回行う想定を披露したことがあるが、インフレ率が高止まりしていることからすれば、ラガルド総裁へのタカ派委員からの圧力は相当なものだろう。