(ジャクソンホール会合)パウエルFRB議長はタカ派の発言

ジャクソンホール会合での講演内容

8月26日、米国ジャクソンホールでカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムが開催された。同会合でパウエルFRB議長は、パウエル議長は、高止まりしているインフレ率をFRBの目標である2%水準に低下させることが、現時点で最も重要なことだと明言した。また、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では、今後、入手するデータとその変化次第と前置きしたうえで、大幅な利上げを実施する可能性があることにも触れた。そして、インフレを抑え込むために金融引締め姿勢を継続し、来年前半にかけて金利を引き上げた後も、一定期間維持することが必要となる可能性が高いとの認識を示した。加えて、過去にFRBが採った政策にも照らせば、早過ぎる金融政策緩和への転換は戒めるべきだとして、FRBに対して方針転換(=緩和への転換)の期待を持ちすぎることをけん制した。

パウエル議長の発言からは、パウエル議長の強い意思が伝わってくる。なにより、インフレ率の高進が続いているという状況を改善しなければならないという認識が明確に示されていることは、改めて受け止める必要があるだろう。物価を安定させるためには、金融引締めが必要であり、その影響から経済成長と雇用市場が軟化することは、家計と企業に痛みをもたらすことになる。しかしそれでも利上げを選択するということを明言しているのである。9月FOMCでは、もう一度0.75%幅での大幅利上げが実施される可能性は十分にあると考えるべきだろう。

ただ、今回のパウエル議長の発言内容は、経済成長率の鈍化や、雇用市場の需給緩和など、経済的な「コスト」を伴ったとしても、インフレ抑制のために金融引き締めが必要という、あらかじめ予想された見解である。実は、一連の利上げの最終地点(いわゆるターミナルレート)については、明確に言及しておらず、金利の上昇幅や利上げのタイミングは、今後のデータに基づいて決められるという認識を示すにとどめた。市場は、2023年に金利が低下しないとの遠い未来のイメージに引っ張られ過ぎているのではないか?

『2023年中に利下げに転換することはない』

市場の一部にあった『2023年後半には、金融緩和に転換』という淡い期待を打ち破るものとなった。パウエル議長は、2023年前半にかけて政策金利は上昇し、その後2023年末までは、金利は少なくとも横ばいに推移し、低下することは難しいことを示唆したもので、そのため、株式市場には金利高が米国経済の失速を招くとの悲観論が再度台頭することとなった。

また、欧州中央銀行の政策委員会メンバーで、最もタカ派(金融引締め寄り)とされるホルツマン・オーストリア中銀総裁が、次回の9月のECB政策理事会で0.75%の利上げを議論するべきだとの見方を示したことも、主要中銀がインフレ抑制を最重視する姿勢を印象付けるものとなった。ホルツマン総裁は、「インフレ状況の悪化を踏まえると、最低でも0.5ポイントの利上げというのが私の考えだ」と述べた。従来より、大幅利上げを主張してきたが、ユーロ圏経済の状況が悪化することへの懸念が強まる中で、金利が引き上げられることへの警戒感が強まった。

米FRBは、インフレ抑制を最優先すること、先んじて利上げをしたほうが結果的に利上げなどにより経済を犠牲にするコストが小さくなるとの考えで、これは変わっていない。最近の経済統計もこれを支持するものであり、彼らの利上げを進める決意は変わることはないだろう。これは、ジャクソンホール会合前から分かっていたことであり、26日の発言で、株価が大きく反応したことには、やや驚くほどである。冷静に対応していくことが望ましいのではないか。米FRB高官は、インフレ抑制を最優先すること、先んじて利上げをしたほうが結果的に利上げなどにより経済を犠牲にするコストが小さくなるとの考えを書きらかにしている。最近発表された一連の経済統計を見る限り、彼らの利上げを進める決意は変わることはないだろう。

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