予想外の利上げ
6月16日、スイス国立銀行(中央銀行・SNB)は、政策金利を0.5%引き上げ、マイナス0.25%とすることを発表した。予想されていなかった利上げの実施で、市場には大きな衝撃が走った。SNBが利上げを実施するのは2007年以来である。
ジョルダンSNB総裁は記者会見で「今日、利上げしなければインフレ見通しは大幅に上昇する」との見方を示し、インフレが抑制不能になることを懸念した利上げであることを認めた。同総裁はまた、「想定し得る将来においてインフレ安定化のため一段の政策金利引き上げが必要になる可能性を排除しない」と表明した。背景には、スイスの5月の消費者物価指数が年2.90%となり、2009年につけた同3.1%以来の高い物価上昇率を記録したことがある。SNBはインフレターゲットを2.0%に設定してきたが、スイスのCPIは2022年2月以降は2.0%を超えて推移しており、このままCPIの高止まりが続けば、近い将来に政策金利のさらなる引き上げが必要になる可能性にも言及した。
インフレ見通しも引き上げ
SNBは、インフレ率予測も上方改定した。今年3月の時点では、2022年の物価上昇率を2.1%としていたが2.8%に引き上げた。2023年は1.9%、2024年は1.6%にそれぞれ従来の0.9%から引き上げた。
SNBの利上げ実施を受け、為替相場では、スイス・フランが買われ、一時ユーロに対し2%程度上昇した。ヨルダン総裁は「現在の状況には為替レート動向を含め多大な不確実性がある」とした上で、「スイス・フランが過度に上昇するならば外貨を買う準備があるし、下落する場合は外貨売りも検討する」と為替相場の過度の変動には、積極的に活動することを示唆した。
さらなる利上げも
金利については、今回の利上げによっても、政策金利はまだマイナス圏にあるという点が課題だろう。金融市場では、SNBが早期にマイナス金利を解消するために行動するとの見方が強まっており、次回9月の政策会合で0.25%幅か0.50%での利上げを実施、年内に1.00%幅で政策金利が引き上げられるとの見方が出ている。
インフレ見通しの変更に、機敏な対応を取ったスイス国立銀行の姿勢は、インフレファイターとしてのSNBの評価を高めるだろう。さて、日本銀行はどうするだろう。海外からは、金融政策変更観測はあるが、今回は動きを取れないのではないか?日本の物価上昇は本当に一時的なのだろうか?