日本銀行(日銀)は6月14日、長期金利への上昇圧力を抑制するために、国債買い入れを実施した。前日に予告していた5,000億円から8,000億円に増額して実施された。
米FRBが今年3月に利上げを実施して以降、世界的に物価の上昇傾向が顕著となり、他の主要中央銀行にも金融引き締めの圧力が波及した。5月には、FRBを追う形で、主要中銀が金融引締め、政策金利の引き上げに踏み切っており、長期金利への上昇圧力は、顕著となっている。そして更に、10日に発表された米国消費者物価指数が、インフレ圧力の強さを示唆すると、主要国の金利には上昇圧力が強まった。これにより、日本の債券市場でも償還までの期間が長い、10年超の残存期間の超長期国債を中心に利回りが上昇していた。
日銀は13日にも日本国債の買い入れを0.25%で実施し、応札額は実に1.53兆円と2018年7月(応札額1.64兆円)に実施した債券買いオペに次ぐ2番目の大規模なものとなった。しかし、それでも、10年日本国債利回りへの上昇圧力は和らがず、14日の追加買い入れに繋がった。
明日15日に実施を予定されていた債券買入れオペは、1年超3年以下を対象として6,250億円(前回4,750億円)、3年超5年以下対象として6,250億円(同4,750億円)、5年超10年以下を対象として8,000億円(同8,000億円=6月14日)で実施される。追加実施される10年超25年以下を対象とした債券買入れオペは2,500億円(前回1,250億円)、25年超を対象として1,500億円(同500億円)で実施される。
日銀は、14日午前の債券買入れの増額によっても、金利上昇圧力が和らがないことを見ると、午後には、15日に実施予定だった中長期国債の買い入れオペを増額、加えて超長期債の買い入れオペも追加して実施すると発表した。午後の日銀の発表を受けて、国債利回りは上昇一服した。まさになりふり構わず、打てる手はすべて打つという姿勢で、金利の上昇を抑えている。パワープレーでYCCとして定めているガイドラインの金利(10年国債利回り0.25%)を死守してきている。
一方で、10年超の残存期間の超長期国債には、上昇圧力が鮮明となっている。各年限の利回りを挙げておくと、以下の通りである。
- 10年日本国債利回り0.250%
- 20年日本国債利回り0.875%
- 30年日本国債利回り1.200%
- 40年日本国債利回り1.350%
力づくの金利操作は、いびつに歪んだイールドカーブを作り出すという結果になっている。
海外のヘッジファンドの中には、債券利回りの上昇を抑える日銀の試みが、持続不可能と見る見方も出てきている。インフレは、世界的に顕在化しており、日本も例外ではなく成りつつある。主要先進国の中央銀行は、前述の通り金融政策を引き締め、金利を引き上げる方向にあるが、それは単に米FRBを津出生するという理由だけからの行動ではない。インフレ率が明らかに上昇していることが最大の理由である。
しかし、日銀はインフレ率の上昇を認めていない。これは一時的な現象と認識しているようである。しかし、日本の物価指標は上昇を示唆しているのである。海外勢の中には、インフレに片目をつぶった判断のもと、金融緩和路線を独走する日銀が、持続的なYCCを維持し続けることはできないと予想しているのである。
低成長率の経済状況と長く上がることのなかったインフレの状況の前に、日銀は矛盾に満ちた政策に固執しつつあるのではないか。円安もしかりだが、危険な匂いを感じざるを得ない。