米FOMCが0.75%幅での利上げ実施を決定

パウエル議長の声明から

米連邦準備理事会(FRB)は、6月14~15日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標を0.75%引き上げて、1.50~1.75%とすることを決定した。

今年3月・5月のFOMCに続く3会合連続での利上げ実施である。加えて今回は、0.5%幅ではなく、0.75%幅で利上げを実施した。

パウエル議長は、FOMC後の会見で、5月FOMC以降もインフレ率は驚くほど高進しており、それが今回より大幅な利上げが正当化されると判断した根拠となったと述べた。現在の経済状況はインフレを低下させることが不可欠であり、継続的な金利引き上げは適切と考えるとして、次回7月FOMC会合でも、0.50%または0.75%幅での利上げを示唆した。ただ、利上げのペースは今後のデータ次第であり、0.75%幅の利上げが一般的になるとは思わないとも付け加えた。

経済の現状認識については、雇用市場は非常に引き締まっており、労働需要は強い一方で、労働力の供給は抑制された状態にあるとした。消費にはやや変化が見られるが、全体としては消費意欲は旺盛で米国経済全般に減速の兆候はない、むしろ供給の制約が予想以上に長期化していることから、物価上昇圧力が拡大しているとした。ロシアによるウクライナ侵攻はインフレを一段と押し上げる圧力であり、中国のロックダウンについてもサプライチェーンの問題をより悪化させる可能性が高いとして注視しているともコメントした。

FRBが犯しうる最悪の過ちはインフレ低下に失敗することだとも明言し、FRBは高インフレリスクには十分な注意を払いながら、迅速に利上げアプローチを継続してインフレ率を引き下げることにコミットするとも付け加えた。金融引き締めにより需要を抑制することは可能との見通しを示し、雇用市場が堅調なうちにインフレ率を2%に引き下げることを目標に、目標達成のために全力を尽くして、今後数カ月で、インフレ低下に進展が見られる証拠を得られるようにするという。

金融市場はFOMCの決定を好感

FRBが踏み込んだ対応を取り、インフレ抑制に自信を示したことで、金融市場は今回の措置を好感した。株価は反発、S&P500指数は前日比1.46%高の3,789.99、ダウ平均は同1.00%高の30,668.53ドル、ナスダック総合指数は同2.50%上昇して11,099.16で取引を終えた。16日の日経平均株価も寄り付きから一時500円超上昇した。

米国債も買い戻され、利回りは低下した。10年米国債利回りは前日比0.19%低下して3.29%、2年米国債利回りは同0.20%超低下して3.24%、5年米国債利回りは3.41%で取引されている。

為替相場では、米ドル金利低下を受けて米ドルが反落し、ドル円は一時133円台後半まで下げた後、134円10銭台で取引されている。ユーロドルは、ECBの長期債利回り抑制策を受けて一旦下げ1ユーロ=1.04を割り込んだものの、FOMC後のドル金利の低下で1.046ドル台を回復している。

Powell Vows Hikes Until ‘Clear and Convincing’ Cooling in Prices

今後どうなるかは、インフレ率が本当に低下するのかどうかにかかっている。パウエル議長は、FRBがインフレ低下を示す説得力ある証拠を得るまでは、勝利宣言はしないとして、インフレ抑制に取り組むことを明言している。しかし、インフレを抑制すると同時に、失業率を低く維持するのは容易なことではない。パウエル議長も認めた通り、金利操作には常に行き過ぎのリスクと十分でないリスクが存在する。加えて、エネルギー価格など、FRBがコントロールできない要因に左右される可能性の方がはるかに大きいことも事実である。政策金利をどのペースで、どこまで引き上げるかは、インフレ率がどう推移するか次第である。見通せない状況は暫く続くだろう。

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