40年ぶりの伸び幅を示した米CPI
米国労働省が発表した消費者物価指数CPI(5月)は、総合CPIが前年同月比8.6%上昇(前月は同8.3%上昇)、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIが前年同月比6.0%上昇(前月は6.2%上昇)となった。CPIの幅広い項目で上昇が加速しており、前年同月比の伸び率では40年ぶりに最大となった。
特に、生活必需品が2桁の上昇率を記録し、住居費、食品、ガソリンも大幅な上昇が目立った。家賃は前年比5.2%上昇し1987年以来の上昇率となった。エネルギー価格は前年比34.6%上昇と2005年以来の伸びで、ガソリン価格に至っては同49%上昇した。食品は前年比11.9%上昇で、こちらも1979年以来の高い伸び率だった。電気料金は同12%上昇で2006年8月以来の大きな伸びだった。
インフレ率上昇のピークアウト期待は消滅
今回の統計は、4月のCPIが3月よりも伸び率で鈍化していたことから、インフレ率上昇が既にピークに達したあと、落ち着き始めていると見方を否定するものだった。賃金の上昇率はCPIほどには上昇しておらず、実質賃金は目減りし、消費者の生活は圧迫されてきている。『物価の番人』であるFRBは、インフレ率を抑制することを優先し、金融政策を判断していかなければならないだろう。しかし、急速に大幅に金利を上げれば、景気後退(リセッション)のリスクは高まることになる。金融市場では、FRBの金利引き上げは不可避となる中、インフレ率が落ち着くことは難しいとの悲観的な見方が広がっており、米国経済が2023年にリセッション入りする公算は高まったとの見方も台頭している。
短期金融市場では、6月、7月、9月と続く3回のFOMCで0.50%ずつ、三回の利上げを実施することを織り込んでいる。しかし、予想以上にインフレ率は上振れしており、利上げ幅を拡大することが視野に入る。ウクライナでの戦争は長期化する公算が強まり、対ロシア経済制裁も今後影響が深刻化するほか、OPENプラスの原油増産にも限界があり、中国ではロックダウンが解除され需要の回復が想定されるなど、食料品とエネルギーの価格には押し上げ要因が目白押しである。
CPI発表を受け、株価は大幅に下げ
米国株式相場では、CPIの公表後、株価が下げ始めた。マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アップル、ネットフリックスなど、金利に敏感なハイテク株が下げを主導し、ナスダック総合指数は11,340.02まで下げ、週足では前週末の12,012.73から5.7%下落した。S&P500指数は週足では5.1%下げ3,900.86で引けた。ダウ平均は同4.6%下げ31,392.79で引けた。週足での下落率は今年1月21日週以来、最大になった。
米国債券相場では、FRBが積極的な利上げを進めるとの見方が強まり、特に短・中期債利回りが上昇、2年米国債利回りは3.057%まで上昇して、2008年6月以来の利回り水準を付けた。5年米国債利回りは3.2637%とこちらも2008年8月以来の高水準まで上昇した。
10年米国債利回りは3.178%に上昇したが、2年米国債と10年米国債の利回り差は一時0.09%まで縮小した。FRBの積極的な金融引き締めの先には、リセッション(景気後退)懸念がつきまとう。3~7年米国債の利回りは全て10年米国債利回りを上回り、逆転現象が起こった。5年米国債と30年米国債の利回りは逆転した。
為替相場では、ドル円は134円40銭台まで上昇した。ユーロドルは1.0510ドル近辺まで下落し、前日比1ポイント近く下落した。