市場の予想を上回る幅で政策金利の引き上げを実施
6月7日、オーストラリア準備銀行(RBA)は政策委員会を開催し、インフレ圧力を抑制するための「必要な措置」として、政策金利であるオフィシャル・キャッシュレートの誘導目標を0.50%引き上げ0.85%とすることを決定をした。
RBAは声明で、同国のインフレ率は大幅に上昇しており、今後、さらに上昇する見通しを得たこと、今回の利上げがインフレ率をターゲットの範囲に収束させることに寄与すると述べた。
前回に続く2回連続の利上げ実施であることに加え、一部で予想されていた0.25%幅の利上げよりも一歩踏み込んだ措置で、それだけ、RBAがインフレ圧力が高まっていることを警戒していることを物語る。
ロウ総裁は政策発表後、声明を発表し「政策委員会は、今後数カ月の間に、オーストラリアの金融状況を正常化する過程でさらなる金融引き締め措置を想定している。」として、更に一段の利上げを実施することを示唆した。ただ、今後の利上げの時期と利上げ幅は、インフレや雇用市場の見通しを政策委員会がどう評価するか次第」だとした。
前回の政策理事会後にも、ロウ総裁は、中立金利とされる2.50%水準まで金利を引き上げることは「不合理ではない」と発言しており、このペースで利上げを続けると、政策金利は年末までに1.5~1.75%に、来年半ばまでには2.5%程度まで上がることが予想される。
一方で、RBAがバランスシートの縮小をどのように行っていくかにも注目しておきたい。前回理事会で示された方針では、パンデミック・ショックの際にRBAが買い入れた国債や準政府債は、満期償還を迎えた場合には再投資しないが、保有債券を市中に売却して資金を吸収することはないとされている。量的な緩和策を急いで巻き戻すことはしないという点では、米FRBなどとは異なるスタンスに特徴がある。
RBAは年限の短い債券をあまり保有していないため、最初にまとまって償還を迎えるのは、2023年4月償還のオーストラリア国債(132億オーストラリアドル)である。したがって、上記の方針が変わらないとなれば、RBAのバランスシートには、当面、買い入れた債券残高が残り、かなり緩やかなペースでしか残高は減少しない。それだけ、資金吸収は先になるということである。
今回の利上げを受けて、3年オーストラリア国債利回りは3.16%へと上昇、10年オーストラリア国債利回りも3.55%へと上げた。為替相場でも、オーストラリア・ドルは対米ドルで、1オーストラリアドル=0.7200ドル近辺から0.716ドルに小幅軟化したものの、その後は値を維持した。当面、金利は高止まり、為替もオーストラリア・ドルの底堅い展開を予想する。