財政・金融両面で追加策を発表
中国国営中央テレビ(CCTV)や新華社通信が23日報道したところによると、中国国務院は、李克強首相が主催した乗務会議を開催し、強力な経済支援措置のパッケージを導入することを決定した。
国務院は、新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策にともない、中国経済への下押し圧力は増大し続け、多くの企業などにとって非常に厳しい状況になっているとの認識を示し、経済活動を正常な軌道に戻すために6分野33項目に及ぶ景気安定化策を実施するという。
財政政策としては、税還付を受けられる業種を増やし、年間の減税・税還付の規模を2.5兆億元から1,400億元(約2兆6600億円)上積みして2.64兆元に増額する。中小零細企業や個人事業主、一部業況が悪化した業種に認めていた年金掛け金などの社会保険料の納付も年内は猶予する。乗用車購入税も600億元減税する。
金融政策では零細企業向け融資を増額する。小規模事業主の借り入れやゼロコロナ政策による物流混乱の打撃を受けた運送会社などが持つトラックのローン、個人向けの自動車ローンについて、市中銀行に対して年内の元利払いを猶予するよう補助する。また、農村部での灌漑事業や老朽化した住宅街の改築のための長期融資を市中銀行に推奨する。
他には、サプライチェーンや物流の回復を支援するため、国内外の旅客便を増やす措置をとるという。
中国経済の2022年GDP成長率は下方修正相次ぐ
中国経済の2022年のGDP成長率については、下方修正が相次いでいる。先週19日には、スタンダードチャータード銀行が、年率5.0%としていた予想を同4.1%に引き下げていた。24日には、UBSとJPモルガンも中国経済の成長率予想を下方修正した。各行とも、ゼロコロナ政策による制限措置で4月の活動が急減速したことを反映したことが主な理由である。UBSは、予想成長率を前回の前年比4.2%から同3.0%に引き下げた。中国経済が今年第3四半期と第4四半期には回復する可能性が高いとしつつも、ゼロコロナ政策を堅持して、行動規制は緩和されないことを見越した。4-6月の第二四半期のGDPについては前年同期比1.4%増、前期比では年率8.0%減に落ち込むとの厳しい予想である。同様の理由から、JPモルガンは、中国経済の成長率予想を前年比4.3%から同3.7%に下方修正したと発表した。
市場の評価はいま一つ冴えない
李克強首相と劉鶴副首相は、経済成長を担当しており、政策にも明るいと評価されている。このところ、新型コロナウイルス感染拡大と厳格な移動制限が中国経済に打撃を与えていると認め、経済と市場の安定のために、政策調整を強化するとのコミットメントを明らかにしてきた。今回の追加経済対策もその一環であり、規模も伴った策が含まれ、市場にも評価する声は一定程度広がっている。
ただ、逐次投入が続く感も否めない。中国の感染者は減少傾向にあるが、新型コロナウイルス感染対策の行動抑制は長期化することへの懸念は根強い。一部都市では、再度、規制の強化が伝えられていることもあり、中国経済の正常化には時間がかかるとの見方が引き続き市場への重しとなっている。