米国経済 止まらぬインフレ率上昇
3月15~16日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が、4月6日に公表された。実際に実施された0.25%の利上げの他に、注目すべきは、次の2点だろう。
- FOMC参加者の多くは、3月会合でさえ、0.25%幅よりも大幅な利上げに同意する意向があった。
- 米FRBは、バランスシート縮小に向けて議論を始めていた。
1については、3月会合で「多く」の当局者が0.5ポイント利上げを支持していたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、0.25%の利上げにとどめたということである。物価上昇圧力が和らぐという楽観的な見通しはなく、今後のFOMC会合では0.5%の利上げが1回以上適切になり得るとの認識を、「多く」の当局者が示したということである。通常、戦争・紛争はデフレ要因であることから、ロシアのウクライナ侵攻がなければ、インフレ率の上昇率が高止まりし、より踏み込んだ利上げが行われていたということがわかる。
2については、3月FOMC会合では、FRBの大規模な保有資産を減額していくという具体策が議論され、月額最大950億ドル(約11兆7600億円)のペースで縮小する計画が提示されていたことが明らかになった。それだけの規模で、資金が吸収されることは、金余り相場とは異なる段階に入るということを意味する。次回のFOMCは5月3-4両日に開かれる。この会合では、0.50%の利上げとバランスシートの縮小が承認されると見込みである。
先週も、FRB高官の「タカ派」的な発言は続いた。ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁は4月2日、インフレ抑制のために、政策金利を正常な水準に引き上げることが可能だとの認識を示した。デーリー・サンフランシスコ連銀総裁も、3日公表のインタビューで、5月のFOMC会合で0.5ポイントの利上げを決定する論拠は強まってきているとの見解を示した。ブレイナードFRB理事も5日、ミネアポリス連銀主催のインフレに関するオンライン討論会に参加し、ブレイナード氏は、上院でのFRB副議長の指名承認を待つ身である。
言うまでもなく、FRBの2大ミッションは、雇用の最大化とインフレ率のコントロールにある。FRB高官が、高止まりするインフレ率を目の当たりに詩、その抑制に本腰を入れざるを得ないことは当然と言える。経済にも打撃とならず、考えられるカードは0.50%の利上げと上述のバランスシート縮小で、その可能性は極めて高まっていると言えるだろう。ただ、どこまで、金利が上昇したらインフレが抑制されるのかは非常に難しい議論で、場合によっては、より大幅の利上げが実施される可能性も取りざたされ始めている。この流れはそう簡単に止まりそうにない。
4月13日に発表された米国の生産者物価指数PPI(3月)は、前年比11.2%上昇だった。事前予想を上回り、2010年以降では最大の伸びとなった。市場は、十分に織り込んでいるが。
「タカ派」色を強めるFRBの姿勢に、3月中旬以降、米ドル金利は断続的に上昇し続けている。短期金利は近い将来のFRBによる大幅な利上げを織り込んで急ピッチで上昇してきたが、先週は、長期金利も同様に跳ね上がった。短期金利の落ち着きどころが、より高い水準になるとすれば、長期金利もその分水準を切り上げることは、従来指摘してきたとおりである。10年米国債利回りは、節目と見られていた2.50%を上放れ、先週末には2.70%まで上昇した。今週に入っても同水準にある。30年米国債利回りも同様に先週は2.70%まで上昇、今週は2.81%へと一段上昇した。どの水準で止まるかを言い当てることは非常に難しいのが悩ましいところである。
また、ドル金利上昇で、為替市場でも、ドル高は一段と進行した。ドルインデックスは100を超えてきており、100.45水準まで値を切り上げている。ドル円に至っては、1ドル=122円~123円台を固められるかという展開をドル高方向に抜け出す展開になっている。日銀が、10年日本国債利回りのレンジ(0.00%±0.25%幅)の上限を超えた金利上昇を嫌っているとの見方も、ドル円でのドル買い材料とされている。円安による輸入インフレの加速が起こるとすれば、日本円の長期金利も上昇してしまう圧力になるのだから、利回り0.25%で無理やりキャップをはめるような政策に意味があるのかと思うが、日銀には、長期金利上昇を容認することも、ドル円為替の動きを抑制する兆しもない。1ドル=126円台も付けており、このままでは1ドル=128円50銭を試す展開も視野に入るだろう。