センチメント悪化も、雇用市場は堅調なドイツ経済
ドイツのIFO経済研究所が3月28日に公表した期待指数(3月)は85.1だった。前月の98.4から大幅に低下し、新型コロナウイルスのパンデミックにより経済が失速した2020年5月以来の低水準である。企業の景況感はロシアのウクライナ侵攻により急速に悪化したことが明らかとなった。エネルギー価格が急騰したことも、影響したと思われる。ドイツ企業は先行きを非常に厳しいと見込んでおり、ドイツ経済のセンチメントは、急速に悪化している。ただ、独連邦雇用庁が31日発表した3月の失業者数は前月から1万8000人減って11カ月連続の減少となった。3月の失業率は5%で前月と変わらなかった。企業部門で、労働力不足が顕著になっており、雇用市場が引き締まっていることは、判断を難しくさせる材料だろう。
ユーロ圏全体では、消費に陰り
ユーロ圏を見渡すと、消費者信頼感は大幅に悪化に向かっている。3月の消費者信頼感は、2月の-8.8から―18.7と大幅に悪化した。ウクライナの状況は、欧州の地政学的なリスクを認識させ、ユーロ圏全体の経済成長に影響を及ぼしている。
昨年来、インフレ率が急ピッチで上昇する中、欧州中央銀行(ECB)が、金融政策を引締めに転換する可能性を市場は織り込み始めている。ユーロの短期金融市場では、ECBが2023年3月までに計1.00%幅で利上げすることを織り込んだ。米ドル金利もそうだが、このところの急速な利上げの織り込みは、ペースが加速している。景気が停滞感を強める中で、インフレ率は上昇するスタグフレーションのリスクは、高まっている。
さらに、厄介な問題は、エネルギー価格が上昇し、物価全体に上昇圧力が掛かり始めていることである。ロシア産天然ガスや原油のボイコット、ウクライナでの戦争の長期化により、インフレ圧力が増すという、ユーロ圏経済にとって、最も厳しいシナリオを想定すると、先行きは厄介である。
ユーロ圏消費者物価指数CPI(3月) に注目
4月1日に発表されるユーロ圏消費者物価指数CPI(3月)は、過去最大の上昇幅となるとの予想も出ている。ラガルド総裁は、スタグフレーションのリスクがそれほど高まっているとは言えないとのスタンスを貫いているが、CPIの統計次第では、次のECB政策委員会が、金融政策のスタンスを巡って、紛糾することも十分にあるのではないか。
米FRBは、3月FOMCで利上げを開始し、利上げサイクルに入った。そして、2022年内は幅を伴った利上げがあり得るとの立場を鮮明にした。ラガルド総裁が述べているように、欧州と米国では景気サイクルは異なり、物価の状況も異なるため、米FRBと同じようなペースで、ECBが利上げ判断をするとは考えられないが、ウクライナに隣接するユーロ圏の地政学的なリスクが顕在化し、エネルギー問題に難民問題と、ユーロ圏経済への攪乱要因は百出している。ウクライナ侵攻の影響を最も強く受けることは間違いないだろう。