先進国市場

世界経済をGDP、景気のサイクルから俯瞰してみる

世界経済を俯瞰してみる

 

世界には実にたくさんの国があります。面積や人口、自然条件や気候、政治体制や言語、宗教など、切り口は様々です。本書は、投資によって、一定の成果を得られるような判断をするには、どんなことを知っておけばよいか分かるようにすることを目的にしています。そのためには、世界経済の大きな流れや、今後どう変化していくのかを長期的に把握しておくことが必要になります。

先ずは、世界経済を俯瞰して、見ていきましょう。世界には、実に176カ国あると言われますが、経済的には、力の差が大きくあります。その力をGDPという物差しを使って計ってみましょう。GDPとは、国内総生産のことで、一国の国内で生産活動によって、年間にどれだけの商品・サービスが産みだされたかを金額換算し、それから原材料など中間で投入されたものの価値を控除して算出される付加価値の総額です。

 

 

2018年の国別GDP年額を上位10カ国の順で表してみました。

1位は、アメリカ合衆国です。世界全体の約24%、約4分の1を占める巨大な経済大国であることが分かります。2位は、中国(中華人民共和国)です。中国も、世界全体の16%弱を占める大きな経済国です。3位は、わが国・日本です。世界全体の6%程度の規模があります。その後は、ドイツ、イギリス、フランスと続きます。そして7位には、インドが登場します。意外な感じがしますか?8位はイタリア、9位はブラジルが続き、10位はカナダです。

こうしてみると長らく政治サミットとして機能してきたG7(グループ7)というのは、いいえて妙な部分があることが分かりますね。経済的に世界のトップグループにある先進国7カ国が集まって、政治や経済の問題を話し合う場として機能してきました。一方で、中国やインド、ブラジルは、「先進国」ではなく「新興国」として分類されていますが、今では、結構大きな経済力を持つ国だと分かります。G7ではなく、G20など枠組みが拡大された背景には、そうした構造変化もあるのです。

中国については、経済力が拡大するにつれて、世界でも存在感が大きくなっていることは、みなさんも、いろいろな場面で感じていただいていると思います。さらに、この先10年を想定すると、インドもさらに成長してくるでしょう。かつては、日本も、経済力で世界を席巻していた時期がありました。国際的な会議などに出ると、日本が話題になることも少なくなり、寂しい気持ちになることもありますが、日本は今でも世界第3位の経済規模を持っている経済大国です。少し元気がないように、見えますが、まだまだ経済力は大きな国ですし、技術水準も、品質も高い製品を創り上げ、新しいサービスも創りだすことが出来るイノベーションには、前向きに取り組むべきでしょう。

 

 

過去20年で、世界はどう変わったのか?

 

1980年に遡って、GDPの国別トップ10をリストアップしてみると以下の通りとなります。前述の2018年の表と見比べてみてください。

第1位は、アメリカでこれは変わりません。顔ぶれだけでいえば、1980年の表にないインドとブラジルが2018年にはランクインして、スペインとメキシコは2018年にはランク外(11位以下)になったことになります。

規模でいえば、1980年から2018年までに、世界のGDP額は、約7.5倍に拡大しています。1位のアメリカは綺麗に7.5倍程度になっていますので、世界全体に占める割合も約4分の1で変わりませんが、他の国々はどうでしょうか?日本やドイツは規模が2倍程度にしか成長していないので、全体の割合も数字を落としています。急成長したのは、中国です。ランクでは7位から2位と躍進し、割合でも、2.7%から15.9%と大きく数字を伸ばしました。

 

この他に特筆すべき国はインドでしょう。1980年のランク外だったインドは、2018年には、旧宗主国のイギリスやフランスといったヨーロッパの先進国に肩を並べるまでに成長しました。この表にはありませんが、人口では、インドは約10億人と、イギリスなどの20倍近い人がいます。国が成長する時には、人口も重要な要素です。経済が成長すると、富が蓄積され、しかもそれを多くの人口で分けることによって、成長がより確実になっていくという側面があります。インドをはじめとする新興国は、人口も味方にしながら、経済成長を着実に遂げていくと推測されます。

 

景気にはサイクルがある

 

さて、経済には、調子のよい時期と、不調の時期があります。経済が成長している時期は、企業も人も活動的で、経済がうまい具合に回っていきます。好況といわれる時期です。でも、景気には、循環性があります。景気は『好況→後退→不況→回復』という順に状況が変化します。『好況』とは景気が拡大しているときの状況で、市場規模も拡大し、企業の活動や投資は活発化します。所得も上昇する傾向にあり、消費も拡大する時期なのですが、いつまでも好況が続くわけではなく、やがて、景気の拡大が止まって『後退』の時期がきます。そして後退が進むと、企業の中には倒産や規模縮小など、様々な経済面での調整・整理が起こり、『不況』の時期がやってきます。季節に例えれば冬の時期です。しかし、調整が終わると、また経済活動が活発になり始め、『回復』の時期がやってきます。そうしてまた『好況』に繋がっていくのです。景気には、時間の長さはそれぞれ異なりますが、一定のサイクルがあるのです。

2019年は年初から、株式・為替・債券市場とも、とても相場が動いています。2008年のリーマンショックから10年間続いてきた景気拡大局面が終わりを迎えるのではないかという懸念が市場に広がり、年初には、株式市場が急落して混乱したこともありました。実は、1929年以来、米国経済の拡大局面は10年以上続いたことがありません。米国の中央銀行であるFRBが金利を断続的に引き上げてきたこともあり、好調を続けてきた米国経済の景気拡大もそろそろ終わりなのではないかという心配が強まったのでした。

そして、景気は市場の動きに影響を与えます。『好況』の時期には、株価や資産価格が上昇する傾向にあります。しかし、後退期から不況期には、株価は調整(下落)する傾向にあります。景気の拡大も行き過ぎると『バブル』と呼ばれるような株価や資産価格の急騰が起こり、その後で、急落が発生したりすることもあります。バブル(泡) がはじけるように資産が減ったり無くなってしまう『バブルの崩壊』といわれる現象です。資産運用は、そんな市場の急激な動きから振り落とされずについていくことが、難しさの一つだと思います。

株価などの資産の変動(振れ)は、その平均値を取って年率(%)で表示されます(変動率)。2016年・2017年は変動率が低い相場が続きましたが、今年は年初から変動が激しく、市場が見通しにくく、資産運用にも工夫が必要になります。 景気が拡大している好況期には、株価や資産価格が全体として上昇する傾向にあり、買って持っておけば利益を上げることは比較的容易です。しかし、後退期から不況期は、株価が上がりにくいばかりか下落する銘柄も出てきます。そのため、安定した銘柄や下がりにくい銘柄を選ぶことが重要になってきます。

 

 

それには情報集めが重要になります。会社や業界の特徴、景気後退期の銘柄の特徴、等を踏まえて投資判断をしなければなりません。一方で、株価や資産価格が調整されたり下落するということは、安く買える機会と捉えることもできます。前回書いたように、景気循環は比較的長期では確実に見られますので、長期投資の視点に立てば、その会社が破たんなどしなければ株価が上昇することが期待できます。また、規制緩和など社会的なルールの変更や他社の買収によって会社が業績を大幅に伸ばす機会も増えることがあります。

また、景気成熟期から後退期には、金利が下がる傾向にあります。この時期、債券は価格が上昇することになります。利付債ならその保有者に年間で支払われる利払い(クーポン)額は一定です。債券の発行体(国債ならば国、社債ならば会社)が破たんしなければ、確実に一定期間ごとに利払いを得られる他、債券の額面にあたるお金は満期になると償還払い戻しされます。例えば香港市場には米ドル建ての、アジアの国々や中東の産油国などの国債や、有名企業の社債もあります。株式運用に固執せず、債券でお金を運用するという発想も検討に値するのです。見通しが悪いから何もしないのではなく、長期の時間軸で投資を考えましょう。アジア債券などを含む海外市場には、いくつかの債券を組み合わせたファンドもあり、個人でも手頃に買うことができるチャンスがあります。海外居住のメリットはここでも生かされます。まずは勉強し、正しい知識を身に付けましょう。