アジア市場

アジア諸国で上がらないワクチンの接種率

中国では、新型コロナウイルスのワクチン接種目標を6月末までに5億6000万回としているが、その目標に向けて、政府も本腰を入れてきたようである。新華社通信によると、国家衛生健康委員会が全国各地からの報告を集計したところ、5月16日までのワクチン接種回数は4億693万回に達した。1日当たりのワクチン接種者数は1,400万人近くに上ったという。
一方で、中国東部の安徽省や北東部の遼寧省では、感染者が確認された。ただ、これにより、安徽省の合肥市では14日に1日当たりで過去最多の36万回の接種が行われたそうだ。感染者が出ても、それをてこに接種を促進するあたりは、すごみさえ感じる。

アジア諸国は、中国もそうだが、ワクチン接種をためらう人々の心理的な壁に直面している。早い段階で、比較的ウイルス封じ込めに成功した中国や香港では、必要性を感じないという人や、ワクチンの安全性や有効性を信じていない人、普段東洋医学に依拠しており西洋医学にアレルギーを感じる人など、理由は様々だが、接種数が伸び悩んでいる。中国国務院は共同予防抑制メカニズムが、わざわざ記者会見を開き、中国製不活化ワクチンが英国などで発見された新型コロナウイルスの変異株に有効であることを発表するなど、ワクチン接種を後押ししている。9月に備蓄したワクチンの一部の有効期限が切れると発表した香港政府も、繰り返しワクチン接種を呼びかけているほか、接種者の行動制限や隔離措置を緩和する方針を打ち出し、接種率を上げようと懸命である。

ただ、中国が、前述の5億6千回を達成したとしても、人口14億人の中国では接種率はせいぜい人口の40%である。接種を一気に進めて接種率50%を超えた英国や46%に達したと報告される米国は先行している。余談だが、米国では、オハイオ州でデワイン知事(共和党)が、新型コロナウイルスのワクチンを接種した州民5人に、抽選でそれぞれ100万米ドルをプレゼントするキャンペンを発表した。この辺りのおおらかさは実にアメリカらしいが、補助金をばらまく結果になるよりは、ずっと安く済むとすれば合理的ということか。欧州では、ワクチンパスポートの実施を急ぎ、EU内でのワクチン接種者の移動に隔離措置を課さない試みが始まろうとしている。

いずれにしろ、アジアでの感染状況は、変異種の流行によって別の段階に入ってきている。これまで感染拡大を防ぐことに成功し、優等生とみられてきたシンガポールや台湾などでも、最近は感染者が急増している。シンガポールは、接種の方針を変更し、2回接種を優先せず、少なくとも1回接種でワクチンをできるだけ多くの人に接種できるようにすると発表した。台湾では、台湾疾病管制局(台湾CDC)が5月19日から、在留資格のない外国人の入境を禁止すると発表した。マレーシアは、5月10日から行動制限措置を強化して引き締めを図っている。

今後は、変異種の強毒化を前提に、重症化防止のために効果があるといわれるワクチンの接種を進めることができるかが鍵となるだろう。接種率が行動制限の緩和に繋がり、景気の回復にも大きく影響することが予想される。筆者も、6月には香港で接種を検討している。