先進国市場

5月の米国生産者物価も上昇~FOMCは動くか?

悩ましいインフレ統計を突き付けられたFRB~FOMCは量的緩和政策の変更を議論し始めるか?

上昇するインフレ率~生産者物価は高い上昇率

15日から、米FRBは公開市場委員会(FOMC)を開催している。注目は、米国経済が回復軌道を確実にする中で、FOMCが物価の状況をどう考えているか、そして、量的な金融緩和策を変更することを検討し始めるかどうかである。これまで、パウエル議長を始め、FRB高官は、物価上昇圧力は一過性のもので、年内には収束する公算が大きいと述べているが、最近では、複数の地区連銀総裁からは、異なるニュアンスの発言も出始めている。市場には、物価上昇が、持続的なインフレ率の上昇につながるとの懸念もある。

15日米国労働省が発表した生産者物価指数PPI(5月)は、総合PPIが前月比0.8%上昇となり、前月4月の同0.6%上昇から一段と上昇率が高まった。総合PPIは前年同月比で6.6%という大幅な上昇だった。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアPPIでは、前月比0.7%上昇とこちらは前月の同0.7%上昇と横ばいだったが、市場の予想を上回った。

PPIは、通常、消費者物価CPIに比べて振れ幅は大きいが、2021年に入って以来、大幅な伸びを記録している。要因は、商品市況の高騰による原材料価格の上昇や物流面での制約、雇用コストの上昇が挙げられる。特に、製造業では、受注残が積み上がり、需要が供給能力を上回ったままであるも、物価の押し上げ要因となっている。

消費者物価指数も、価格転嫁を示唆

先週10日に発表された消費者物価指数CPI(5月)も、3カ月連続で予想を上回る伸びが確認され、インフレ圧力の強まりが継続していることを示唆する内容だった。総合CPIは前月比0.6%上昇と事前予想の同0.5%上昇を上回った。前年同月比では5%上昇と、08年8月以来の大きな伸び。4月の前月比0.8%上昇からは上昇率は和らいだものの、2009年以来の高い伸びである。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIも前月比0.7%の上昇で、前年比では3.8%上昇と、1992年以来の高い伸びだった。伸び率も気がかりだが、何より、企業がコスト上昇分の一部を消費者に転嫁し始めていることが示された。

前年同月の物価統計は、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するためのロックダウンの実施で、需要が消失したことから、物価が急激に下がって、著しく低い数字になった。そのため、前年同期比では、数字が大きく出ていることは間違いない。しかし、食品やエネルギーを除くコアインフレ指数でみても、コアPPIは前月比で0.7%、前年同月比で5.3%という高い上昇率であることは懸念すべきだろう。

FOMCで動きはあるか?

バイデン政権の経済対策が強い消費需要を喚起していることは確かで、製造業では受注残の増加や在庫不足が生じているし、移動制限措置の解除やワクチン接種の拡大は、経済活動の増加、そしてサービス業での需要拡大に結び付いている。米国経済が堅調さを取り戻しつつある中、物価の上昇が広範に亘って見られるようになっており、市場の逼迫感すらある中古車や住宅取得が引き続き活発であることから家庭用調度品、人々の移動が戻りつつあることで航空運賃などは上昇している。中期的にも、政策面では、所得や資産格差の是正による中間層・低所得者層の消費増大や、家庭支援政策・クリーンエネルギー促進政策などは、構造的なインフレ押し上げに寄与する可能性も指摘されている。少なくとも物価上昇がここ数カ月継続しており、今後、継続しないと断言できるだろうか?FOMCでの議論が注目されるが、委員たちにとっては悩ましい統計を突き付けられた格好である。10年米国債利回りはちょうど1.50%の水準にある。16日のFOMC終了後のパウエル議長の会見が楽しみである。