市場予想

9月FOMC後、米国金利は急ピッチで上昇

9月FOMCは決定を先送りしたが⁉

米連邦公開市場委員会(FOMC)は9月21~22両日に開催され、政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標レンジを現行の0.00-0.25%で据え置くことを決定した。そして、利上げの時期については、2022年に開始する方向に委員のコンセンサスが傾きつつあることを明らかにした。一方で、注目されていた債券購入プログラムの段階的縮小(テーパリング)に関しては、米国経済が現状のまま進展すれば正当化され得るとして、近く開始する可能性が高いことを示唆した。パウエルFRB議長は、FOMC後の会見で、11月FOMCでテーパリングを開始し、2022年半ばまでに債券購入プログラムを終了させる可能性があるとの認識を示した。新型コロナウイルスのデルタ変異種感染による影響や、インフレ率が高止まりするのかどうか、そして米国連邦政府の債務上限問題に加えて、中国恒大の債務問題と見通せない課題も多く、今回のFOMCは判断を先送りした形である。

パウエル議長は記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大に対応した一連の緊急経済支援を終了させていく最初のステップについて説明した。その最初のステップがテーパリングで、「早ければ次回FOMC(11月)会合で決定する可能性がある」と述べた。ただ、状況によりテーパリング開始を先延ばしする可能性も否定しなかったほか、資産購入縮小のタイミングとペースは、利上げ開始のタイミングに関して直接のシグナルを送ることを意図しないと明言し、テーパリングが利上げと繋がっているわけではないことを強調して、市場への配慮をにじませた。パウエル議長としても、FOMCとしても、市場の神経を逆なでしないようかなりの配慮をして、市場との対話を重視した工夫がうかがわれるが、市場では「タカ派」への転換、すなわち、これまでのように寛容な金融緩和スタンスから変化するのではないかという疑念が頭をもたげた。

 

2022年末までに利上げ実施の可能性

加えて、FOMC声明と同時に発表された四半期毎の経済・政策金利予測(いわゆるドット・チャート)によれば、早ければ2022年中の利上げ開始を予想するFOMC委員の数は増えていたことも、金利上昇のイメージを膨らませたのだろう。6月FOMC終了時に公開されたドット・チャートでは、2023年に初めて利上げがあるとの予測が大勢だったが、今回はその予想を前倒しした委員が増え、18人のうち9人が2022年の利上げを見込んでいることが示された。政策金利であるフェデラル・ファンド翌日物金利の予測は、2023年に1.00%に、2024年に1.75%と、それぞれ前回よりも上昇した。

※参考:米FRB Website(英文)に遷移します。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20210922.pdf
(英文ですがドット・チャートを参照ください。4ページでFF金利予測掲載)

インフレ率の上昇は歯止めがかかっているとは言い難い。資源価格や原材料の上昇、サプライチェーンの問題から生じる半製品・部品不足、労働力不足による雇用コスト増加、さらにここへきて電力不足や燃料価格の上昇見通しも、きな臭ささえ漂わせる。米FRBは物価上昇要因は、コロナ禍からの経済回復の一時的な要因と言い続けてきたが、それも説得力を失いつつある。

 

ドル金利上昇、長期金利は急上昇

金融市場も、FOMCが金融政策スタンスをタカ派にシフトしつつあると解釈した。フェデラル・ファンド金利先物は2022年12月限でインプライドイールド(金利換算レート)が0.315%とFOMC後に0.085%上昇した。来年12月までには0.25%幅での利上げが1回実施される可能性を市場は完全に織り込んだことになる。米国債利回りも長期債を中心に上昇し、9月29日アジア時間では、10年米国債利回りは1.50%に、30年米国債利回りは2.06%で取引されている。

筆者は、物価上昇圧力は消費にも悪影響を与えかねないため、これを抑制することも含めて、物価上昇への備えから、FRBは超金融緩和姿勢からより中立的な姿勢へのシフトをすると指摘してきた。インフレ率の上昇が一時的では済まされない事態も視野に、米FRB・FOMCはインフレ警戒気味のスタンスを維持するだろう。米ドルは長期金利を中心に更に上昇圧力を受けるだろう。

 

連邦債務上限にも要注意

なお、要注意な材料として、連邦予算の債務上限を巡る米議会の不穏な動きも気になるところである。財務省の手元資金は、10月18日頃に資金が尽きると言われている。連邦債務の上限ルールを運用停止するか、上限引き上げが法的に措置されない限り、連邦政府はデフォルトに陥ることになる。これは、債券相場に与える影響というより、世界中を混乱に陥れかねない。イエレン財務長官やパウエルFRB議長の警告にもかかわらず、米国議会上院での民主・共和両党の対立の溝は深いままである。