市場予想

米国雇用統計(5月)は改善         堅調な回復基調を確認

米国雇用統計(5月)は堅調な回復基調を確認

米国労働省が6月4日に発表した雇用統計(5月)は、米国経済が堅調な回復軌道にあることを示唆するものだった。非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比55.9万人増で、4月の確定値27.8万人増から大幅に増加し、雇用者数の伸びが加速した。業種別では、飲食店が18.6万人増、レジャー産業で29.2万人増と改善が目立ち、ヘルスケアや教育分野でも増加した。米国全体でみると雇用者数は新型コロナウイルスの流行前と比べて、まだ760万人程度少ない。

家計調査に基づく失業率は前月の6.1%から5.8%に低下した。長期失業者数も、5月は43.1万人減で、2011年以降で最大の減少数だった。米FRBが注目する指標の一つと言われる労働参加率は61.6%と前月の61.7%からは若干減少した。ただ、コロナ禍前の水準は63%台だったことから見ると引き続き低水準である。雇用市場が、さらに改善するかどうかは、今回のようにサービス業で雇用が増加し続けるかがポイントになるだろう。

市場は予想ほど強くないと解釈したが・・・?

今年に入って、伸び悩んでいるように見えた雇用のデータに比べると、今回5月の雇用統計の数字は強いと受け止めるべきだろう。雇用数の着実な伸びと、失業率の改善が続いていることは、米国経済が堅調さを取り戻していることを示す。また、景況感の改善や生産の急増、旺盛な需要の増加といった経済状態からすると、雇用統計がもっと強い数字になっていても不思議ではないが、事前予想よりもやや伸び悩んで見えるのは、生産における供給面での制約や労働力不足がネックになって、雇用者を確保できないという事情が影響していると推測される。

需要は急増しており、これに対応するため、企業は人員確保に動いているが、人手不足が記録的な水準に達している。そのため平均時給は前月比0.5%増の30.33ドルとジワリと上昇した。雇用市場では、働き手を求める企業側と労働者側には、ミスマッチが生じており、賃金の上昇圧力にもなりかけている。ミスマッチをうまく解消できるかどうかが、雇用市場の今後の回復ペースに影響を与えそうである。

FOMCでの議論は、近く夏場には開始されると予想

今月15~16日にFRBは連邦公開市場委員会(FOMC)の開催を予定している。月額1,200億ドル実施している債券買入れによる資金供給策を縮小していく討議を開始するかどうかは注目点である。金融市場は、今回の雇用統計を受けて、雇用市場は期待されたほどには改善していないと見ているが、伸びは一時停滞していた今年2~3月とは異なる。加えて、インフレ率の上昇や、賃金の上昇をどう受け止めるかは、悩ましい材料ではないか。万が一、雇用市場の改善がコロナ禍前の水準まで達しない場合でも、インフレ率抑制のために、これまで想定していたよりも早く金融政策のスタンスを変更する必要に迫られる可能性はあると、筆者は考えている。少なくとも、8月26~28日に開催されるジャクソンホール(ワイオミング州)での経済シンポジウムまでには、議論は開始されるのではないか?ただ、債券購入の減額などの実際の政策の変更は、年内には実施されないと考えてよいだろう。
2013年のテーパータントラムの悪夢を思い起こしながら、FOMCに臨むFRB理事たちの心中は、当面、穏やかではないだろう。