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タイの2021年GDP成長率は年率1.5~2.5%に下方修正

タイの2021年GDP成長率は年率1.5~2.5%に下方修正

 

タイNSEDCは予想を下方修正

タイの国家経済社会開発委員会(NESDC)が5月17日に2021年のGDP成長率の見通しを更新した。新たな予想は、2月15日に発表された年2.5〜3.5%から下方修正され、年1.5〜2.5%である。実は、その3カ月前の2020年11月の予測では、年3.5%~4.5%成長だった。年2.0%下方修正されたことになる。

 

タイの2020年通年のGDP成長率は、▲6.1%で2019年の+2.3%から大きく減速、マイナス成長は2009年以来だった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国内外からの需要が減少し、物品・サービス輸出、民間投資、民間消費が大幅に落ち込んだことがその理由である。

2021年に入って、世界の貿易量の回復が見られたことや、政府の経済対策として政府支出が増加したこと、民間需要も前年が低水準だったことからの反動増となったことなどが、成長率の押上げ要因となっていたが、新型コロナウイルス感染の再拡大が、先行き見通しを不透明にしている。4月からの感染拡大局面では、変異種の感染が急増しており、感染者数は昨年のピーク時の4倍、死者数は同6倍程度に増えており、昨年来の感染拡大期で最悪の状況になっている。新型コロナウイルスの感染が沈静化しないばかりか、ワクチンの接種も進んでおらず、首都バンコクなど都市部で、娯楽施設が封鎖されるなど経済活動には制限が掛けられている。

 

タイ中銀は政策カード温存

タイ中央銀行は5月5日に開催した金融政策決定会合で、政策金利を過去最低の0.50%のまま据え置くことを全会一致で決定した。8会合連続で金利を据え置いたことになる。新型コロナウイルス感染の第3波が襲来する中、追加緩和する余地を残して経済状況がどう変化するか見極めようとの判断だろう。タイ中銀は、感染拡大による経済的な負の影響が、信用面や個人消費に出ることを危惧しているようである。タイの家計の状況は、対所得負債比率が上昇し、アセアン諸国比でも高くなっており、一段とぜい弱になっている。タイ国内の金融システムにもリスクとして波及する可能性があるとの見方を示した。次回会合は6月23日に予定されている。

 

 

ワクチン接種は進まず、準備も遅延

タイ中銀も指摘しているが、ワクチンの調達と接種を如何に加速させるかがタイ経済回復の鍵になるだろう。アヌティン保健相は19日、新型コロナワクチンの第1回接種を国民の70%を目標に9月までに完了させると、これまでの今年末までという目標を前倒しした。これまでに、タイの人口6600万人超のうち、ワクチンを接種できたのは、医療従事者と基礎疾患を持つ人など150万人強にとどまっており、人口の2%程度に過ぎない。ワクチン調達でも出遅れてしまっている。確保したワクチンは、英アストラゼネカ社製のみでタイ政府には批判が集まっている。

政府は、6月にはタイ国内で生産されたアストラゼネカ社開発のワクチンの入手が可能となり、接種が本格化するとしているが、大規模な接種プログラムの準備にはまだ手が付いていない。

 

新興国市場にも影響大

新興国が、新型コロナウイルス対策で直面する課題は、急上昇する債務比率、ワクチン確保と接種の遅れ、医療・防疫体制のボトルネックと、共通する。タイも例外ではなく、本格的な景気回復は、2022年以降に先延ばしされることになる可能性が高まっている。先進国との格差は拡大するだろう。今年は、新興国への投資ウエイトは控えめに考えておくべきだろう。