資産運用

金融機関との付き合い方と、金融機関のあるべき姿

金融機関のあるべき姿と付き合い方

 

金融庁の金融審議会・市場ワーキンググループが発表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」は、一部のエキセントリックな部分だけが注目されたり、政治問題化して、世間でも騒がれました。しかし、中身は、日本で少子高齢化社会がこれから直面していく、将来の生活資金不足を把握し、これからどんな準備をしておくべきか、年代別にとるべき対応も推奨されることがはっきりと書かれたとてもよいレポートです。

金融庁のホームページからダウンロードできますので、皆さんも是非、一読ください。

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf(2019年10月現在)

 

このレポートには、金融サービスを提供する金融機関側も、どうあるべきなのかについて書かれています。先ず、挙げられているのは「金融リテラシーの向上」です。日本では、お金の管理のしかたなどを含めた投資教育には、子供も大人も時間が割かれていません。クレジットカードの仕組みを適格に説明できなかったり、多様化するモバイルペイを使ったお金の支払いに戸惑ったり、401Kプランの選び方に苦労したりしたことはありませんか?金融リテラシーは、日々の積み上げでしか向上しません。興味を持って少し調べたり、考えてみるだけで、随分リテラシーは変わるものです。金融機関も、もっと、投資教育の場を提供するべきだと思います。

そして、「資産形成や資産承継制度の充実」が大切だということも、書かれています。「資産を形成」するには、若いうちから、少額でも、こつこつと積み立てたり、貯めていくことが重要です。投資の基本は、分散・積み立て・長期投資だということは、本コラムでも繰り返し申し上げていますが、他の王道はないというほど、重要なことなのです。そして、どうやって両親などから資産や事業を引き継いでいくのかも、とても重要なことです。何かが起こってしまってからですと、手遅れになるばかりです。また、金融機関は、正しくタイミングも考えてアドバイスをするべきでしょう。

次に、「アドバイザーの充実」ということも提唱されています。日本の方に多い悩みは、何処に言って、誰にアドバイスを受けたらよいか分からない。というものです。ここに行けば、この人なら、必要なアドバイスを的確に受けられるような、世の中になってほしいと思います。

そして、もうひとつ大事なことは、「高齢顧客保護」です。日本では、保険で新商品が出ると乗り換えを勧めたり、無駄になるのがわかっているのに新商品を購入させるような勧奨が、大規模に組織的に行われていたことが大問題になりました。金融機関が、収益を上げるためだけに、顧客の利益を損ねて、販売行為に走るなどということは許されることではありません。特に、判断能力が衰える可能性のある高齢者を狙って、そうした営業をすることは厳に慎まなければなりません。みなさんも、金融機関やアドバイザーとの付き合い方を考え直してみてください。

 

 

投資教育後進国

 

日本では、投資教育も進んでおらず、金融機関も積極的に商品を開発してこなかったことや、昨今のマイナス金利政策もあり、資産運用はあまり注目されないで来ました。もちろん、資産を増やすことに熱心な方もいらっしゃいますが、「資産運用」というと、「濡れ手に粟」という言葉のように、苦労しないで得た不労所得のようなイメージがあり、まだまだ、しっかりと取り組んでいらっしゃる日本人は多くはないと思います。

日本政府も、「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げて、投資・運用への関心を高め、制度的には、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」や少額投資非課税制度「NISA」など、税制優遇まである仕組みを作ってきましたが、「貯蓄」から「投資」へのシフトは期待したほど進んでいません。

 

「iDeCo(イデコ)」とは、加入者が毎月一定の金額を積み立て(掛金を拠出)、あらかじめ用意された定期預金・保険・投資信託といった金融商品で自ら運用し、60歳以降に年金または一時金で受け取るものです。なお、60歳になるまで、引き出すことはできません。

「NISA」は、投資で得た利益にかかる税金が「ゼロ」になるというメリットのある非課税制度です。通常、株式等の売買による利益(売却益)や配当等の利益(配当益)が出ると、税金がかかりますが、NISA口座でされた売買なら、これらの税金はかかりません。ただ、課税が発生しない利益の上限はあります。

 

 

私が拠点とする香港では贈与税や相続税が課されません。投資から得たキャピタルゲイン(譲渡益)や配当金に対しても課税されません。従って香港の富裕層は税金については悩みが少なく、資産をどう増やすかに注力するようになります。そうすると資産運用に対する金融機関への要求や期待も高くなるというわけです。こうした背景もあり、香港では、世界中のより広い運用機会を得られるようになり、それが運用資産を呼び込み、金融センターとして急速な発展をもたらしました。

 

本当に日本人は投資を考えなくていいのでしょうか? 日々の生活や趣味娯楽、車や住宅にもお金は掛かります。長期で見ると、学資や老後にもお金は必要です。今、ある程度の目処がついているという人でも、望む以上に長寿になることはありえますし、インフレや円安という、見通せない要因にも生活が左右されることは起こるかもしれません。こうした事態に、一定程度の「備え」を持っておくことは、とても重要なことです。節約や貯蓄で、これらを賄うことができれば、それはそれで結構なことですが、低金利の環境のもと、貯蓄だけでは覚束ないというのが現実ではないでしょうか?そこで、大事なことはお金にも働いてもらう「資産運用」が重要になってきます。

 

実は、資産運用に経験のあまりない方でも、実は、ほとんどの方が資産運用を経験してきています。企業にお勤めの方は、企業「年金」として、将来の年金というキャッシュフローを作り出す仕組みの一部を担っています。個人でも、「保険」の形で、死亡保障以外の貯蓄保険や学資保険の形で、資産運用に相当することに取り組んでいます。ところが、「運用」実感もなく、「成果」も実感できていない、というのが実態です。本書で「資産運用」について興味を持ち、学び、考えていただく機会にしていただけたらと思います。