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ドイツ総選挙~政局は流動化へ

ドイツ総選挙の結果は?

9月26日、ドイツではドイツ連邦議会(下院)選挙(以下、総選挙)の投票が行われた。最大の注目点は、4期16年首相を務めたアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相が、政界を引退することを受けて、誰がドイツの政治をリードするのかである。なお、ドイツで現職の首相が立候補しない総選挙は、1949年以来だという。

CDU・CSUは、7月下旬には支持率30%に届く勢いで、総選挙を有利に展開するとの予想もあったが、与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)のラシェット党首が、7月にドイツ西部を襲った大規模洪水災害洪水による被災地を見舞った際の態度が問題となり、「不謹慎」だとして批判の的になって支持率を失った。約1カ月前の8月末時点では、中道左派の社会民主党(SPD)が23%の支持率だったが、対するCDU・CSUの支持率は22%と冴えなかった。投票直前の世論調査でも、SPDの支持率は、CDU・CSUを僅差で上回っていた。

CDUはアルミン・ラシェット党首、SPDはオラフ・ショルツ副首相兼財務相、緑の党はアンナレーナ・ベーアボック共同代表を首相候補として擁立して、総選挙を戦ってきたが、どうやら、どの党も単独過半数は難しい状況である。ドイツ連邦選挙管理委員会が、ドイツ時間27日午前2時半(日本時間27日午前9時半)時点の集計では、SPDが得票率25.8%で一歩リード、CDU・CSUが同24.5%で第1党から転落する見通しである。緑の党は、若年層の支持を集め、同14.3%と選挙前の予想よりは躍進した。

どの政党が政権を取るかわからない状況

ただ、この得票率では、主要3党のいずれも単独過半数を獲得するには程遠い状況である。首相候補であるSPDのショルツ副首相財務相とCDUのラシェット党首は、どちらも年内の新政権樹立に意欲を示しているが、SPDもCDUも、緑の党や第4党となる中道の自由民主党(FDP)を取り込んで連立を組む必要がある。しかし、緑の党は政策的には、SPDとの相性が良いと言われ、FDPはリントナー党首が保守政党との連立を望んでおり、まとまりを欠く。そもそもFDPと緑の党はそれぞれが掲げる政策にかなりの違いがある。リントナーFDP党首は選挙結果を受け、SPDやCDUと協議する前にFDPと緑の党が話し合いを行うことを提案した。何やら複雑な交渉になりそうな雲行きである。

少数政党が、閣内に入った場合に、要求する閣僚ポストによっても、それぞれ党内をまとめ切れるか微妙になるだろう。因みに、4年前の総選挙では、メルケル首相ですら政権を発足させるまでに、約6カ月の時間が掛かった。そして、新政権は山積する課題にも向き合う必要がある。欧州では、経済のグリーン化の流れが急速に進む一方で、ドイツのインフラは老朽化が進んでおり、デジタル産業の育成には投資不足が指摘されるなど経済的には課題が多い。第2次産業のウエイトは高く、特に、自動車産業とエネルギー産業で脱化石燃料化を進めた場合に、ドイツ経済が不安定化しないかは懸念されるところである。

欧州の団結も困難に?

今回の総選挙は、ドイツの政治史にとって大きなターニングポイントになろう。そして、欧州連合にとっても、メルケル氏の退任はリーダーシップをだれが握るのかという点で、大きな課題を突き付けるだろう。ドイツは欧州で最も重要で安定した国のひとつであり、経済的にも政治的にも影響が大きい。ドイツにメルケル首相というしっかりしたリーダーが居たことは、欧州政治の安定には大きなプラス効果があった。EUが問題に直面し意見が割れたときには、事あるごとにメルケル氏がイニシアティブをとり、時には説き伏せ、時には協調を訴えて乗り切ってきた。ブレクジットも、欧州復興基金も、ギリシャ問題も、ロシアのクリミア侵攻も、欧州の意見を最終的に集約して丸めてきたキーパーソンはメルケル氏だったと言っても言い過ぎとは言えないだろう。彼女が退任した後、欧州のリーダーシップをだれが取るのかは、大きな問題となる。正直に言って、代わりは想像がつかない。それだけ、欧州の政治が流動化することは間違いがないと言えるだろう。