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G7の舞台裏では英国とEUが火花!!

G7の舞台裏では英・EUが火花‼ 北アイルランド議定書問題

G7(先進7か国首脳会議)が閉幕した。トランプ前米大統領の在任中は、G7がほとんど機能しなかったことから、今回の会議は、G7なりの結束を示したということで、一定の成果とみることができるだろう。

ただ、このG7の会議の合間に、英国と欧州連合で断続的に話し合われた問題があることをご存じだろうか?6月12日、ジョンソン英首相は、G7首脳会議の合間の時間を縫って、マクロン仏大統領、メルケル独首相、フォンデアライエン欧州委員長と会談した。会談では、EU側が英国に対して、合意済みの離脱協定の全面的な履行と、英本土・北アイルランド間を移動する一部製品への税関検査の導入を再度要求した。EU側は、今年4月以降、英国が離脱合意を正確に履行していないと主張している。マクロン大統領はジョンソン首相に対し、離脱協定をしっかりと順守するならば、英国との関係改善は可能だと伝えたという。しかし、ジョンソン首相は、この問題で実務的な解決策が必要との考えを示し、双方の対立緩和に向けた迅速かつ斬新な話し合いを呼び掛け、双方はかみ合っているとは言えない。

北アイルランド議定書

英国がEUから離脱する際に締結した北アイルランド議定書には、EU加盟国のアイルランドと英領北アイルランド間では、陸続きで往来も自由化していたため、制限することが物理的に困難で、自由な物流を認めることとされた。しかし、北アイルランドと英本土間のモノの移動は、海峡を越えるために、一部で検査が導入されることとなった。しかし、英国側は、議定書の通りに検査を実施すれば、英本土から北アイルランド向けの物流に、支障をきたすとして、冷凍肉に対する検査などを一方的に棚上げして、事実上、議定書に違反する状態を続けている。

同議定書第16条には、離脱協定が経済的、社会的あるいは環境的に困難と判断される場合には、双方がセーフガードを発動できるとしている。ジョンソン首相は、北アイルランドと英本土の間の物流には既に支障が出ており、英国は北アイルランドに住む住民の利益を守り、英国の領土を保全するためにはいかなる措置も取りうると述べて、セーフガードの発動も辞さない考えを示している。

この問題では、オコンジョイウェアラ世界貿易機関(WTO)事務局長が、英国とEUの対立が深刻な通商問題に発展しないことを願うと語ったほか、バイデン米大統領も、英国とEU双方に歩み寄りを促した。しかし、ジョンソン首相は、この問題の解決は可能だと思っていると発言したものの、北アイルランド議定書が現状のまま適用される場合、英国政府としてはセーフガードの発動も辞さない構えで、譲歩もしない意向である。

EU離脱交渉の残滓

そもそも、2016年6月に実施されたEU離脱の是非を問う国民投票で、僅差の離脱が決定されて以降、離脱交渉は、離脱する英国と離脱された後のEU内の結束と原則論を守らなければならないEUとの間で、具体的な内容は決まらないまま、土壇場まで、場外乱闘を繰り広げた。そして、2020年1月31日に英国はEUを正式に離脱したが、その後も通商上のルールについては、決めきれず、結局、離脱協定に基づいた新しい通商ルールを定めるまでの移行期間だった2020年の最後の最後の土壇場で、FTAを締結して、大混乱を回避したのである。通商上の課題に一応の決着をつけたものの、物流の現場で何が起こるかという検討まで、頭が回っていなかったことは間違いないだろう。昨年も、新型コロナウイルスの感染や、駆け込み的な流通量の増加で、英国とEU間のロジスティクスの現場はパニック状態になったこともあった。

今回のように英国内であるはずの英本土と北アイルランド間の物流に、EUから口出しされるのはたまったものではないという、英国の気持ちもわからないではない。英国経済がEUに依存する状況は変わらない中、英国のプライドだけで、揉め事の引き金にされても困るというのが、EU側の主張でもある。具体的な、通関・検査などは、双方の管理の対象として合意しており、一定の手続きが必要となることは、通商協定締結の段階で決めたことである。英国のEU離脱の残した爪痕は、案外と根が深い。