アジア市場

中国経済も物価上昇は短期的か?

中国の物価上昇は短期的か。中期的な物価動向は安定。

中国税関総署が7日に発表した貿易統計では、5月の輸出額は前年同月比27.9%増だった。 1~5月の累計でも、輸出額は前年同期比で40.2%増と大幅な増加になった。新型コロナウイルス流行で落ち込んでいた外需の回復が続いており、米欧や東南アジア向け輸出がけん引した。輸入も同51.1%増と、中国国内の生産活動が活発化したことを反映した。製造業の活況は当面継続する見通しである。

中国国家統計局が9日発表した生産者物価指数PPI(5月)は、前年同月比9.0%上昇と高い伸びだった。4月は6.8%上昇だったがそれから一段と上昇した。2008年以来の高い伸びで商品価格の値上がりが理由である。商品価格は今年に入り上昇しており、中国当局は原材料の供給拡大や投機・買い占めの取り締まりといった商品高抑制に照準を合わせた措置を打ち出して価格上昇の抑制を図っている。

ただ、消費者物価指数CPI(5月)は前年同月比1.3%上昇にとどまっており、消費者物価は比較的抑制されている。これまでのところ、商品価格上昇の影響が見られるのは主に鉱業や原材料生産に関わる業種に限られており、家具や繊維などへの価格転嫁は限られている。小売業は内需が今一つ盛り上がらない中で、価格転嫁する動きを見せておらず、消費者物価に影響し始めるのは第4四半期以降になるとの見方も出ている。
また、広東省における新型コロナウイルス変異種の感染拡大などで、行動抑制的な指導も出ており、当面、消費者需要を抑制する可能性も考えておく必要があろう。

統計局によるとPPIは、4-6月(第2四半期)末まで上昇を続けるものの、年後半には伸びが鈍化するとの予想である。それに呼応するかのように、中国人民銀行の易綱総裁は10日上海で開かれたフォーラム「陸家嘴論壇」で、今年の消費者物価上昇率が2%未満にとどまるとの見通しを示した。政府目標は3%前後であるので、2%未満となれば、かなり低い水準に収まるということになる。中国経済の成長率目標も6%程度で、こちらも達成可能な状況にある。物価も、制御可能で居心地が良い水準となれば、今年の金融政策は変更しなくてもよいということにもなる。利上げを行う公算は小さいとなれば、市場も安定した動きに繋がるだろう。

 

まだまだ多い不確定要因

冒頭で見た通り、中国の輸出入は今年第2四半期になっても成長を継続している。しかし商務部の関連機関が6月9日に発表した「中国対外貿易情勢報告(2021年春期)」という報告書の内容は、控えめというか慎重だった。中国の対外貿易情勢の現状を、引き続き多くの不安定で不確実な要因があり、通年の情勢は依然として容易には見通せないという。

世界各国で、新型コロナウイルスのワクチン接種状況は、進展がまちまちで集団名駅の獲得には時間がかかることや、ウイルスの変異種の感染拡大という要因が、不透明さを増幅させている。また、感染状況には、所々でリバウンド現象もみられ、世界経済や通商状況の安定的な回復を脅かしているとして、警戒感を色濃くにじませた。他に外的な要因としては、米欧での金融緩和策の出口戦略も注目である。いずれにしても、2021年内は、外部環境は引き続き非常に錯綜し、複雑で、予見可能性が低いだろう。

長期的には、中国経済が、外需主導の高成長モデルから、内需主導のマイルドな成長モデルに軸足を移していく中で、潜在成長率は今後低下していくことになる。製造業を中心としてサプライチェーンは地域化、現地化、短縮化に向かい、再配置され、中国の位置づけも変化していくだろう。インフレ率も、高齢化の進行はインフレ抑制要因になるとの見通しを踏まえると、より安定的に推移しることになるだろう。足元で堅調に推移する経済成長と、伸びる兆しを見せるインフレ率をにらみながら、慎重に考えていく必要がある。