アジア市場

インド経済の光と闇について 成長と課題

アジア地域の中で、というより世界中から今、最も注目されている国はインドでしょう。大手金融グループのHSBCは、2028年までにインドが日本とドイツを追い抜いて、世界第3位の経済大国になるとの見解を示しています。 2016年度のインドのGDP(国内総生産)は2.3兆ドルで、これは規模としては世界第5位でした。これが、2028年になると、7兆ドルに達すると予想されています。2028年には、日本が5兆ドル、ドイツが6.0兆ドルの規模になることも予想されていますが、インドは、両国を上回って世界第3位の座に就くことになります。

インドは2014年のモディ政権の誕生以後、GDPで年7%超の高成長を維持してきました。世界の主要新興国の中でも、最も高い成長率を達成している国のひとつと言って良いでしょう。過去には、成長期待の方が先行しすぎている部分があったり、改革が上手くいかず持続的な経済成長に繋がらなかったりしましたが、現在のインドは、本格的な経済成長期に入ったと言えるでしょう。今後の世界経済にとっても、成長の原動力の一部となる可能性が高まっています。

実際、国際通貨基金(IMF)が7月に発表した世界経済見通し(World Economic Outlook, April 2019)では、インドの実質GDP 成長率は2019年に7.0%成長が予想されています。2020年には7.2%に上向くことが期待されています。この先さらに成長ペースが加速すると予測されています。アジアの新興市場国や発展途上国 は、2019年から2020年にかけて6.2%の成長が見込まれています。この見通しは、2019年4月のWEO予測に比べて0.1%ポイント低くなっています。これは主に、世界的な貿易問題のエスカレートによる関税引き上げから、貿易や設備投資にマイナスの影響があり、これを反映したものです。 加えて、インドの内需見通しは、0.3%程度予想を下回って推移していることも、下方修正の要因です。

モディ政権は、2014年の政権奪取後から矢継ぎ早に改革を進め、インドの財政・経済改革に手を付けてきました。2016年11月に実施された高額紙幣の廃止は、現金経済 (経済行為に現金による決済が大半を占める) であるインド経済にとっては、大きな痛みを伴う改革でした。政策発表直後には、足元のインド経済の成長率を1.0%程度押し下げるという予測もあったほどでした。しかし、高額紙幣廃止に伴う現金不足等から、消費を抑えると見られたマイナス要因は、天候にも恵まれた農家の所得増加による消費量の増大で打ち消された形となりました。消費は懸念されたように減少せず、むしろ消費は拡大して、批判を乗り切ることが出来ました。中長期的には、この政策は、インド経済のデジタル経済への移行を促進し、IT・インフラ投資を呼び込む呼び水になる重要な政策と位置づけられていましたが、案ずるより産むが易しという結果になりました。

他にも、モディ政権は、様々な経済改革の施策を打ってきています。それらの施策の中でも最も注目されていたのが、全国レベルでのGST(物品サービス税)の導入です。GST導入はインドの生産性改善に効果が大きいと予想されています。これまでは州ごとに適用税率が異なっていたことから、国内であっても州をまたがった取引や納税の手続きは煩雑で、商取引や物流の阻害要因となっていました。それを一元化できたことによる効果は、今後大きく期待できます。

また、インド政府は、国営銀行の経営建て直しにも積極的な策を打っています。昨年からの2年間で約2兆1100億ルピー(約3兆6000億円)を資本増強と金融システム安定化のために投入しました。かねてからインドの金融システムは、銀行部門が不安定で、成長を続けるインド経済の慢性的な不安要因といわれてきました。しかし、今回の資本増強の実現により、インドの銀行が抱える不良債権の処理が進み、金融面での不安が払拭されることが期待されます。

このようにモディ政権は2014年の政権奪取以降、硬直化し既得権化していた補助金や現金給付に大幅にメスを入れたり、財・サービス税(GST)を導入したりと、構造改革への取り組みを着実に進めてきました。GST 導入によって 、これまで州ごとに求められていた煩雑な申告・納税手続きが、大幅に簡素化され、物流にもよい影響を与えました。また、こうした事業環境の改善にって、国外からのインドへの直接投資(FDI)は順調に拡大してきたのです。一連の構造改革は、中長期的に経済成長率を押し上げ、経常収支赤字の縮小、財政赤字の削減、インフレ率の低下といったファンダメンタルズの改善として成果が現れています。こうした劇薬的な政策を遂行できたのは、モディ政権の高い支持率があったことも見逃せません。

対外的な評価は、継続的に高まっています。GST導入、高額紙幣廃止、不良債権処理の推進による改革の成果は、海外格付け会社であるムーディーズなどにより、インド格上げの理由として評価されています。なお、他の2社、スタンダード&プアーズ、フィッチは、インドの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をBBB- (Baa3に相当)、見通しは安定的(ステーブル)としています。

長期的な視点では、インドでは 2050 年まで総人口の拡大が続くうえ、若年人口の割合が高く、 労働力人口の拡大も続くことが見込まれます。この間、いわゆる“人口ボーナス”を享受出来るのです。また、モディ首相率いる  党は、今年4-6月の選挙で、下院での単独過半数を獲得するほどの勝利を収め、高い支持率を維持しています。政権基盤が一段と、安定感を増してきたことで、政権の長期化と改革へのコミットメントは一段と高まります。過去においては、インドの政争から、構造改革が掛け声倒れに終わり、持続的な成長に至らなかったこともありました。しかし、モディ政権が長期安定政権化することで、混乱した政治状況とは異なる環境を得て、構造改革を実現して行くリーダーシップが発揮されていくことになるでしょう。構造改革が進み、経済成長に一段と弾みがつけば、中国に次ぐ経済大国として世界経済の一角を占める中心的な国になることが期待されます。インドは、今、大きなチャンスを迎えていると言えるでしょう。

 

インド経済が直面する課題

 

インドの消費は、着実に伸びています。特にGST導入により、それまで州ごとにバラバラだった煩雑な申告・納税手続きが、大幅に簡素化されただけではなく、4回に及ぶ税率改訂で段階的に税率が引き下げられてきました。インフレ率が安定して推移してきたことも追い風となり、税率の低下した品目を中心に、消費も拡大してきました。

しかし、インドの課題を挙げるとすれば、脆弱な銀行システムを如何に安定化するかということと、短期的には農業で表面化した問題が社会的にノイズを起こし、財政を脅かしかねないことでしょう。特に今年の総選挙を前に取られた政策は、一緒のバラマキ政策と言わざるを得ない政策でした。インドの財政赤字は、今年、既に政府が目安としていた対GDP比3.2%に達した模様で、歳出削減を実行し、財政赤字を抑制できるかは気掛かりです。思い切った歳出削減か、国有資産売却の加速が実行に移される必要があります。これは今後の注目点です。

また、インドの銀行が抱える不良債権の大きさと破綻企業の処理はかねてより課題として指摘されてきました。不良債権負債は総額2100億ドル(約23兆5200億円)を超えると推定され、インドの民間銀行の不良債権比率はイタリアに次ぎ世界で2番目に高いと言われています。政府も、不良債権処理の加速については、慎重に時間をかけて踏み込んで来ています。2016年5月には、破綻企業の迅速な処理を目指して債務超過・破綻法(IBC)を成立させ、同年12月には施行させました。さらに17年5月には、不良債権処理に際してインド中銀RBIの権限を強化するために銀行法を改正しました。すると、翌月17年6月にはRBIが当時の不良債権全体の25%を占めると言われた大口債務企業12社の破たん処理を迫ったのです。また、17年10月には国営銀行のバランスシート改善のため、総額2.11兆ルピー(約3.2兆円)の公的資金を注入することを決めました。2018年1月4日には、国営銀行に対する資本注入の原資となる総額8000億ルピー(約1.2兆円)の国債発行を決定して、不良債権や破たん企業を迅速に処理していく仕組みを整えました。

そして、巨額の負債を抱えた銀行システムの強化を図るため、国営銀行三行(ビジャヤ銀行、デナ銀行、バロダ銀行)の統合を検討していると言われています。統合が実現すればインド第3位の銀行が誕生することとなります。また、一部ノンバンクで流動性不足が表面化したのをきっかけに、「影の銀行」全体で信用リスクへの懸念が広がっています。ノンバンクの多くは自己資本が不十分な小規模事業者であることから、免許の取り消しや、自己資本が十分な大手事業者が零細事業者を飲み込み、業界での淘汰が進むと予想されます。読者の皆さんには、日本の金融危機当時のことを記憶していらっしゃる方も多いと思いますが、ちょうどその頃のように、インドの銀行システムは大きな転換期を迎えているのです。

 

インド経済を語る上で、農業を見逃すことはできません。インドはコメや小麦などの生産高が世界2位で、GDPに占める農業の割合は約16%ある農業大国です。農業従事者の人口も2億6300万人おり、世論形成にも影響は大きい業界です。しかも来年は選挙を控え、票数の多さもあって、政治も農業に配慮せざるを得ません。今年は、農業にとっては厳しい状況になっています。世界的に原材料価格が上昇していることとルピー安が進んだことで、生産コストが大幅に上がってしまったことが農業関係者の悩みの種になっています。一方で、インドの農業の生産効率は、年々大幅に向上しており、機械化の進展や生産量の多い改良品種の導入、殺虫剤の普及などで、多くの作物で収穫量は増加傾向が続いており、毎年過去最高を更新しているという状況です。そのため、農産物の価格は長期的には下落傾向にあります。昨年は、タマネギ、キャベツ、トマトなどの野菜類では生産過剰の影響から、前年比25%程度値下がりしたとの例もありました。

モディ首相率いる与党・インド人民党(BJP)も、同首相おひざもとの西部グジャラート州議会選でBJPは農村部で苦戦を強いられたことから、2019年の総選挙前にはBJPは総選挙を意識した農業・農村重視の政策を打ち出しました。モディ首相も、「2022年までの5年間で農家の所得を2倍に増やす」との政策目標を公表して、総選挙を乗り切ったという次第です。しかし、これは、選挙対策のためのバラマキ政策であり、所得再分配には一定の効果はあるにしても、財政赤字を拡大させるほか、金融面でもモラルハザードを生みかねないリスクを孕んでいる政策だとの批判は免れません。

何より財政赤字の拡大は、市場が懸念しているインドからの資金流失につながりかねないリスクを増大させます。しかし、モディ政権は2017年度の財政赤字目標を当初のGDP比3.3%から3.5%に修正したという経緯もあり、多少の赤字には目をつぶってでも、選挙対策に出るのではといの観測はくすぶっています。そうなれば、インドルピアへの下落圧力が再度顕在化する懸念は高まるでしょう。

 

なお、2018年7月下旬には都合4回目のGST税率見直しが実施されました。白物家電や化粧品の税率が最高28%から18%に引き下げられたほか、女性の声を強く意識して生理用品を無税とするなど100品目の税率が改定されました。農民や貧困層だけでなく、中間層の消費に配慮した措置ですが、この減税の財源ははっきり示されていません。税率低下による消費刺激効果はありそうですが、どこまで税収減がカバーされるかは、不透明なままです。

また、モディ政権の安定感が揺らいできているだけに、来年の選挙を控えた政局の流動化観測も、気掛かりなところです。

 

インド経済は、2019年度も+7%台前半の成長へ

 

過去のインド総選挙 (下院選挙) では、モディ首相が率いるインド人民党 (BJP) が圧勝しました。しかも、予想以上の得票を得て単独過半数という政権運営には絶好の環境を得る結果となり、第2次モディ政権はスタートしました。

モディ政権は7月5日に、2019年度の予算案を発表しました。目立ったのは、農業対策や中小企業対策のほか、ノンバンクの流動性危機などに直面する銀行への支援です。特に、雇用の拡大や農民の所得増加は、総選挙でも争点となり、公約に織り込んできたものだけに、大幅な予算配分の変更を伴っています。ただし、選挙前の今年2月の補正予算では、零細農家への直接所得補償や個人所得税の免税額の引き上げというバラマキ的な政策を実施したので、それに比べるとおとなしい印象はぬぐえません。

一方で、インド経済はGDP成長率が昨年度は6.8%にとどまり減速の兆しが見られるなど、経済成長をどう果たすのかという課題に早速、直面しています。加えて、ノンバンクの経営危機や天候不順による農産物の出来高減少など、新たな困難も待ち受けています。

 

ノンバンク問題が深刻化

 

インドでは、過去数年で、ノンバンクの貸し出しの伸び率が商業銀行を上回り、住宅ローンや自動車ローンでは、銀行よりも存在感が大きくなってきました。業者の数では1万4000社以上、貸出残高も28兆ルピー(約43兆6千億円)超と、資産規模では商業銀行の3分の1にまで達しています。一方で、小規模経営の業者が多い上に、リスク管理などでは金融当局の規制もさほど及ばず、銀行よりは甘い規制の下で業容を拡大してきたノンバンクには、経営状況を問題視する声も根強くありました。そんな中、昨秋に、ノンバンクの中では大手と目されてきた一部業者がデフォルト(債務不履行)を起こしました。これにより、ノンバンク業者の流動性危機が顕在化しました。ノンバンクの経営危機は、彼らのみならず、バランスシートの調整に苦しんでいた銀行にとっては、更なる貸出債権の資産劣化という逆風となり、市場の不安を招いています。

こうした中、インド準備銀行(RBI)は経営が不安視されるノンバンク業者への規制の強化や、経営基盤の弱い業者の免許取り消しなどを検討していると伝えられています。これにより業界再編が進むと予想されますが、こうした環境下ではノンバンクの貸出姿勢が抑制的に成らざるを得ず、貸出量の減少は、景気の足を引っ張る要因となりかねません。実際に、ノンバンクの貸出残高は前年度比3割も減少しているとの報道もあります。これに、国を挙げて進めてきた債務超過・破産法(IBC)に基づく企業の破綻処理や、銀行の不良債権処理が重なり、流動性不足から経済成長の足かせとなることが懸念されています。

予算案では、450万ルピー(約700万円)までの住宅を購入する層には、ローン金利から最大15万ルピー(約23万円)を減免する住宅促進政策が盛り込まれました。ノンバンクの貸し渋りによって販売が低迷しはじめた住宅セクターをテコ入れすることが狙いですが、小粒な政策という感は否めません。

 

 

改善しない農家の経営環境

 

予算案では、インド独立75周年を迎える2022年までに、全ての農村世帯を電化することが目標として掲げられました。また、農業関連歳出には前年予算比75%の大幅増加となる1兆5251億ルピー(約2兆4千億円)を充てることが盛り込まれ、モディ政権の農村重視の姿勢が、まさに「大盤振る舞い」ぶりに現れました。

しかし、インド農業には、従事する人口が大きい割に、天候に大きく左右される経営基盤に構造的な問題があることが、長らく指摘されてきました。農家に対する技術供与や情報提供、資金支援のいずれをとっても十分でないとされ、雨季の少雨などのリスクに対して、成長性・生産性は低く、抜本的な対策の必要性が叫ばれてきました。他の産業が、高い成長率を果たす中、農業の成長性が低いことは、後継者問題にも繋がりはじめており、農家の子弟の農業離れも課題のひとつです。

こうした中、雨季が始まった6月の降水量が平年比33%減と、今季は5年ぶりの少雨も、短期的な懸念材料として浮上しています。少雨は作付面積の減少に直結し、6月末時点では、前年比約10%減の見込みと、農作物の不作懸念が広がっています。農家の所得向上は総選挙の公約としてもインパクトがあっただけに、この逆風をどう乗り切るのか、モディ政権の対策が期待されるところです。また、イラン情勢の緊迫化などで原油価格が今年6月以降上昇に転じていることも、コスト上昇に繋がり、ボディブローのように効いてくる懸念が強まっています。農業政策は、総選挙で大きな信認を受けたモディ政権の命運を握るといっても過言ではなさそうです。

 

 

予算案や政策は評価

 

予算案では、製造業支援やインフラ投資促進、そして不良債権処理の加速や国営企業の民営化など、待ったなしの課題が浮き彫りになっています。株式市場の好調を背景に、国営企業の政府持ち株売却の目標額を今年度は、過去最高の1兆500億ルピー(約1兆6千億円)に設定しました。バランスシート悪化が懸念される国営銀行に対しては新たに7000億ルピー(約1兆1千億円)の公的資金を注入する計画となっています。そして、18年度に過去最高の644億ドルに達した海外からの直接投資の増加を背景に、保険業での外資規制の緩和や、小売業におけるインド国内調達義務の緩和も盛り込まれました。外資導入に弾みをつけ、成長率を高める戦略です。

インドは、足元の課題も多く抱えますが、これを乗り切って、長期的な成長と世界のトップ5への道を歩むべく、政策を打ってきていることも確かです。少なくとも、モディ政権は、そうした方向感から外れてはおらず、政策は評価できると見ています。

 

 

インド経済は、2019年度も+7%台前半の成長へ

 

インド経済は、モディ首相就任後、外資導入の積極化やインフラ整備の推進といった投資促進に加え、2016年11月には高額紙幣を廃止し、2017年7月には物品サービス税(GST)導入といった経済構造改革も断行しながら、高い成長率を達成してきました。構造改革により、一時的に経済が混乱する局面はあったものの、2018年後半からはインド経済は、持ち直しの動きが見られます。2018年実質GDP成長率は、+7.3%に達した模様です。

2019年もインド経済は消費主導の成長が続くと予想しています。これまでの金利上昇や貿易摩擦の激化など輸出環境の悪化が、設備投資や輸出を鈍化させると見込みですが、民間消費は旺盛なままであり、引き続きインド経済の牽引役になると期待できます。農作物の最低調達価格の引上げが実施されることから、農業所得が持ち直す見込みで、これも、消費が堅調さを維持することにつながるでしょう。生産面では、耐久消費財生産も非耐久消費財生産がそれぞれ堅調に拡大しています。総固定資本形成は、現在のところ好調ですが、金利が上昇してきたことや貿易環境の悪化などを背景にやや鈍化することが懸念されます。設備稼働率は、断続的に上昇してきましたが、今年は総選挙を控えていることもあるためか、企業の新規投資計画は、モディ政権になって初めて鈍化してきており、企業が先行きへの不透明感から、設備投資にそれほど前向きでないことがうかがわれます。従って、経済成長が大きく加速すると見込むことは難しいものの、2019年の実質GDP成長率は、旺盛な消費需要に支えられて2018年と同程度の成長を予想しています。モディ政権が維持されれば、やや上振れて、+7.5%程度の経済成長を達成することは可能ではないかと考えています。

インド経済に与える原油価格の影響はそれほどに大きいのですが、2018年との比較でいえば、原油価格が落ち着きを取り戻したことは、インド経済にとって追い風になるでしょう。インフレ率が安定すれば、賃金の実質増加割合も増えるため、消費拡大に寄与します。また経常収支の改善にも繋がるでしょう。

金融政策は、政府と中央銀行の確執が取りざたされてきましたが、中銀総裁の辞任により、風向きは変わりました。インド中銀が、金融政策で引き締め姿勢から緩和的な姿勢に転換する可能性もあります。2018年は、米国の金融引き締めが断続的に実施され、金利が上昇したことで、新興国通貨安・米ドル高がトレンドとなりました。インドルピーも、この流れの中で、下落を強いられましたが、米FRBの金融引き締め姿勢に変化をかぎ取った市場では、新興国通貨に対する見直し機運が高まっています。ルピーの安定は、インド経済にとっては大きな支援材料になるでしょう。

輸出については、まず輸出が米中貿易戦争を背景とする世界貿易環境の悪化を受けて年明けから鈍化する見込みです。輸入は旺盛な消費需要を背景に、拡大基調を維持するでしょう。

今年4月に実施される総選挙に関しては、与党インド人民党の地方選挙での苦戦が続いていることから、予断を許さない状況です。最終的に、国政レベルでは、インド人民党の辛勝で落ち着くと予想していますが、地方選の結果は、インド上院での勢力構成に跳ね返ります。下院での多数を維持することで、モディ政権が維持されても、議会勢力図の変化は、政権の安定感を欠き、経済政策ではこれまでほど構造改革で指導力を発揮できない可能性が出てきます。そうなると、総選挙後の民間設備投資の加速は、思ったより進まないかもしれません。また、公共投資については、総選後には政府が再び財政再建に注力する可能性が高く、インフラや住宅開発など政府プロジェクトの大幅な加速は見込みにくくなるでしょう。なお、今回の総選挙に向けて、インドの野党連合はベーシックインカムの導入を提唱しています。もし、政権交代が起こった場合には、財政の悪化とインフレ懸念の増大に気を付けておく必要があるでしょう。

インド経済は、2019年度が+7.5%、2020年は投資の回復が順調に続けば+7.7%まで成長率が上昇することも十分に視野に入ります。企業業績も拡大が続く見込みです。内需消費が主導するインド経済は、相対的に米中貿易摩擦の影響を受けにくいと考えられます。インド株式市場は、予想PER(株価収益率)からすれば、株価に割高感はありません。選挙やインフレ懸念が払しょくできれば、株式市場を取り巻く環境は良好な状態が続くでしょう。