アジア市場

香港取引所 5月IPOの注目点

5月に予定されているIPO銘柄の中で注目されているのはJDロジスティクス(京東物流)である。JDロジスティクス(JDL)は、中国の電子商取引大手JDドットコム(京東)の物流部門で、香港取引所への上場で、最大264億香港ドル(約3700億円)規模の資金調達を予定している。6億920万株が売り出され、1株当たりの価格は39.36-43.36香港ドルと予想されている。これは、2021年の香港取引所における上場で2番目の大型案件になると見込まれる。5月17日に投資家からの申し込み受付を開始されており、5月21日に条件が決定され、28日には上場を完了する予定である。

目論見書によれば、JDLの2020年の売上高は前年比47%増の734億元で、純損益は41億元の赤字だった。IPOで得た資金は物流網の整備・拡充に投資されるほか、物流技術の開発やシステム・顧客ベースの増強に充てられるという。コーナーストーン投資家は7社で、ソフトバンク・ビジョン・ファンドからの6億米ドルを含む約15.3億米ドルの出資を受けることで合意しているという。バンク・オブ・アメリカ・セキュリティーズとゴールドマン・サックス・グループ、海通国際証券集団が共同主幹事となる。

2019年11月にアリババが香港メインボードに新規上場して以降、2020年6月に中国の四大ポータルサイトの一つであるネットイース(網易)、EC大手のJDドットコム(京東集団)、今年3月にはオートホーム(汽車之家)、バイドゥ(百度)、BiliBiliとIPOは続いている。背景には、米中関係の緊張が高まり、安全保障を理由に、財務省が「中国軍との関係の濃い企業リスト」を認定し、認定された企業と米国企業の取引や投資を制限する動きや、企業への情報開示基準を厳格化する動きは、米国バイデン政権も継続している。このため、ニューヨーク証券取引所ではなく、香港取引所への上場を検討する中国企業が増えている。ただ、それ以上に、中国企業の資金調達需要は強く、中国本土から見て「オフショア市場」である香港市場の使い勝手が上がっていることは、見逃すべきではない。

これは筆者が、継続して申し上げていることだが、香港上場を行った企業数は増加していることは事実であるし、今後、香港上場を計画する企業は増加すると見込まれる。そして、この傾向は当面変わることはない。米国市場は世界最大の市場であり、投資機会もパフォーマンスも優れた市場だが、それだけではない投資機会が日本に近いところにあるという事実を、しっかりと注目しておくべきである。