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メルケル退任迫る。ドイツの政局は流動化も。

メルケル・ドイツ首相の退陣迫る

 

ドイツでは、9月26日に総選挙が実施される。ちょうど1カ月であるが、事態は混迷してきている。ドイツの調査機関フォルサが24日に発表した世論調査では、中道左派の社会民主党(SPD)が、メルケル首相が率いてきた与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)を支持率で上回っている。SPDは前週比で2ポイント増えて23%の支持率に対し、CDU・CSUは同1ポイント減って22%となり、約15年ぶりに逆転した。これまで、大連立の一角を担いながらも、存在感を発揮できず、政策も人材も冴えない印象が強かったSPDが棚ぼたの支持率上昇を見せている。

 

CDU・CSUは、7月下旬には支持率30%に届く勢いもあった。しかし、ラシェットCDU党首が、7月17日にドイツ西部を襲った大規模洪水災害洪水による被災地を見舞った際に、関係者と談笑していたところをすっぱ抜かれたが、これが「不謹慎」だとして批判の的になったことは大きく響いているようである。

緑の党は失速

勢力拡大が予想され、首相の輩出も有り得るとさえ言われてきた環境政党の緑の党は支持率18%にとどまった。5月の世論調査では、CDU・CSUが23%の支持率に対し、緑の党は26%を得て優位に立っていた。緑の党の共同党首のベアボック氏は、学歴詐称や著作での盗用が疑われ、これで緑の党の支持率は伸び悩んでいる。欧州は環境問題に対する意識も関心も高いが、新型コロナウイルスの感染拡大が続く、平時ではない状態で環境問題がトップの論点になっていないということも、緑の党にとっては少なくとも順風ではないだろう。緑の党はSPDにも支持率で水を空けられる状態で、これは2018年9月以来、実に3年ぶりのことである。

 

現状は、支持率20%前後にCDU・CSU、SPD、緑の党が三つ巴で争う状況である。総選挙の結果は、3党のいずれの党も単独過半数を獲得することは難しく、選挙後の政局運営は困難を極めるのではないかとみられている。

 

ドイツ政治は転機を迎える

今回の総選挙は、ドイツの政治史にとって大きなターニングポイントになる。ドイツのメルケル首相が退任するからである。メルケル氏は、御年67歳なので、意外と、というと失礼ながら、バイデン米大統領78歳、菅首相73歳に比べても若い。そういう点では、勇退は早いという気もする。一方で、メルケル氏は、2000年からキリスト教民主同盟 (CDU) を党首として率い、2005年から第8代ドイツ連邦共和国首相としてリーダーシップをとってきた。ドイツのみならず、欧州連合のアンカー役を務めてきたことを考えると、激務をお疲れ様と労いの言葉を贈るべきだろう。

 

欧州連合にとっても、メルケル氏の退任は大きな課題となるだろう。言うまでもなく、ドイツは欧州で最も重要な国のひとつであり、経済的にも政治的にも影響が大きい。その国のリーダーであり、歴史上初めての女性ドイツ首相あったメルケル氏の存在は非常に大きかった。度重なるEUの問題も、事あるごとにメルケル氏がイニシアティブをとり、時には説き伏せ、時には協調を訴えた。ブレクジットも、欧州復興基金も、ギリシャ問題も、ロシアのクリミア侵攻も、欧州の意見を最終的に集約して丸めてきたキーパーソンはメルケル氏だったと言っても言い過ぎとは言えないだろう。

 

彼女が退任した後、欧州のリーダーシップをだれが取るのかは、大きな問題となる。正直に言って、代わりは想像がつかない。それだけ、欧州の政治が流動化することは間違いがないと言えるだろう。これは、不安定化、不透明化に繋がりかねない。