先進国市場

コーンウオールG7サミットが閉幕

存在意義の回復を優先したG7

今回のG7(先進7か国首脳会合)では、中国に対し行動歩調をとることが確認された。過去4年間は、トランプ米大統領のG7軽視により、存在意義が問われかねないようになっていたG7だが、今回は一定の結束と成果を首脳宣言という形にすることを優先したようにも見える。新型コロナウイルス対策や経済政策、新興国支援では、引き続き国際連携が重要な鍵になることは間違いがなく、G7での協調姿勢は重要との認識は正しいだろう。

対中国では、気候変動やクリーンエネルギーの問題では、中国を巻き込んだ協調を呼びかける一方で、通商問題やサプライチェーン、知財保護に関しては産業競争力の保持を強く意識して、競合する姿勢を鮮明にした。また、ウイグルをはじめとする人権問題や強制労働の問題では、明確に異議を唱えた。東シナ海や南シナ海での中国の勢力拡張姿勢には、現状を変更し、地政学的な緊張を高めようとする一方的な取り組みであるとして懸念を表明した。インフラ整備に関しては、一帯一路構想を進める中国への対抗軸として、温暖化問題に配慮しながら途上国のインフラ整備を支援することを打ち出し、今秋までにワーキンググループを設置して、G7としての提案を報告させることにした。ドイツやイタリアは、中国への対抗軸を明確に打ち出すことには、消極的だったと漏れ伝えられるが、G7での結束を優先させたとみられる。

米中関係は緊張感を維持

1月に政権を奪取したバイデン政権の誕生により、米中関係は、トランプ前政権の時ほどには対立的ではなくなるとの予想もあった。ところが、バイデン政権の対中国姿勢は、これまでのところ相当に厳しいものになっている。産業覇権、テクノロジー技術競争、東シナ海や南シナ海での軍事的な緊張、台湾問題、ウイグルでの非人道的な統治の問題、挙句にはワクチン配布を巡る競争やグリーンテクノロジーに関する競合まで、競合と批判が前面に出ており、緊張が高まりこそしていないものの、張り詰めたストレス状態にある。

特に、台湾について、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸(中国と台湾)問題の平和的解決を促すとG7で採択された首脳宣言の中に初めて明記されたことは、ある意味画期的なことだろう。宣言を受けて、台湾総統府は、「具体的な表現で地域の平和と安定への高度な関心が再び示された。G7各国の台湾への揺るぎない支持に心から感謝する」との報道官談話を発表した。

実はトランプ前政権の対中政策を引き継いだ形のバイデン政権

米議会では、共和・民主党を問わず議員達の多くは、通商問題から人権問題に至るまで、中国政府に対し強い姿勢で臨むようバイデン政権に求める傾向を強めてきた。バイデン政権がどのような対中政策姿勢を採るか注目されてきたが、このところの動きをみると厳しい姿勢がうかがえる。

バイデン米大統領は6月3日には、トランプ前政権下で実施された中国企業への投資禁止措置に修正を加える大統領令に署名した。トランプ前政権が実施した措置については、訴訟も起こされ、対象となる子会社の範囲についても市場や投資家で混乱が生じるなどしていたが、バイデン大統領が署名した大統領令は、トランプ前大統領が打ち出した政策をほぼ踏襲するものだった。これまでの方針通り、中国人民解放軍との関係が認められ、防衛・監視技術の提供を業務として行っている中国企業59社を特定し、これらの企業への投資を今年8月2日時点で禁止する内容である。59社には中国航空工業集団(AVIC)や中国兵器工業集団、中国航天国際、中国船舶重工といった軍事産業はもちろんのこと、監視カメラメーカーの杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など防衛関連企業をはじめ、華為技術(ファーウェイ)や中国移動(チャイナモバイル)、中国聯通(チャイナユニコム)、中国電信(チャイナテレコム)といった通信大手3社も含まれる。既存の投資に関しても、投資家は1年以内に完全に売却するよう義務付けられた。

G7の首脳宣言に中国に対する厳しい、中国にとっては耳障りな内容が含まれたことは、こうしたバイデン政権の姿勢を色濃く反映したと言えるだろう。米中両国は、今後、相手国側からの影響を回避しようと、通商やサプライチェーン、投資や企業買収で相互に影響度を下げようと、量的にも質的にも関係を浅くしていくだろう。しかし、調達先や生産移転は容易ではない。ベトナムなどは、チャイナプラス1の代表格として、中国からベトナムへの生産移転の恩恵を受けるとCOVID-19禍の前から言われてきたが、今回のサプライチェーンの見直しや再構築の中で、移転の動きに一段と弾みがついたかというと、そうとも言えないのが現状である。いまだに、未だにサプライチェーンの修復が進んでいないように、実際の生産ラインの移転には、かなりの時間を要するだろう。

中国の反応は予想通りだが、協議や対話が欠けていることは懸念材料

G7首脳宣言に対して、中国からは、在英中国大使館の報道官が14日、中国を中傷し、ウイグルや香港、台湾の問題で事実を曲げ、善悪を逆さまにした言論を発表して、みだりに内政に干渉したと反発する談話を発表した。G7各国については、米国など少数の国の腹黒い魂胆がさらに露見したと非難し、小派閥の強権政治を行い、人為的な対立と分裂を作り出すものとして、G7に強烈な不満と断固とした反対を表明した。
菅義偉首相が先週の国会討論で、台湾を国家と看做す発言をした際も、中国外交部(外務省)の汪文斌報道官が、「日本側の誤った発言に強い不満を表明する。すでに日本側に厳正な申し入れを行った。台湾地区問題において約束を厳守し、言動を慎むよう日本側に厳粛に促す。いかなる形であれ中国の主権を損なってはならない」と表明した通り、ひとつの中国という原則、内政不干渉の原則を掲げて、反駁していた。中国は、台湾問題、香港問題、ウイグル問題については、いずれも中国国内の内政問題としており、内政不干渉の原則を盾に、聞く耳を持たない姿勢を貫いている。

中国は何を考えているのか?

中国の考え方は、共産党中央政治局が5月31日に開催した「中国の国際発信力の強化について」の第30回集団学習に表れている。この会合では、復旦大学の張維為教授が解説し、提言を行ったが、内容は、人民日報が、張教授のインタビューとして報道している。張氏は、中国に対する西側の誤解及び中米関係などの問題について語り、中国を読み解くことが西側自身にとって有益だと主張した。西側は、中国モデルの運用方式及び大多数の中国人の自国に対する見方を理解する勇気を持つべきだと指摘した。そのうえで、中国のような国を、抑え込むやり方は根本的に通用せず、中米関係の問題において最良の方法は、ウィンウィンの協力を行い、『相互確証破壊』ではなく、『相互確証繁栄』という関係にすることだという主張をした。つまり、中国が何かを改めるのではなく、西側が中国の考え方や行動の仕方を理解して、お互いを受け入れて、共存すべきだということである。

6月11日には、ブリンケン米国務長官と中国の外交トップである楊潔篪共産党政治局員が電話会談を行った。イランやミャンマー、気候変動など、共通の世界的な課題についても議論されたようだが、米中間で論争となっている新型コロナウイルスの武漢起源説や、台湾、香港、北朝鮮、ウイグルといった問題についても取り上げられ、大半の時間は、協議というより論争となったという。この会議では、楊氏から、中国側がバイデン政権になっても、両国の関係が改善しない原因は、米国側にあると考えているとのコメントもあったという。

西側から見ると、聞く耳を持たないようにも見える態度だが、中国からは分かって頂戴よということか。双方、対話がなく、聞く余地もないとすれば厄介である。