先進国市場

為替相場で先行するカナダドルやオーストラリアドルの上昇

為替相場で先行する資源国通貨の上昇

このところ、為替相場では、カナダドルやオーストラリアドルが上昇し注目が集まっている。新型コロナウイルスの感染拡大による経済的なダメージを経験した後、先進国は、大規模な財政出動や超緩和的な金融政策により、世界経済は回復への道を辿りつつある。加えて、カナダやオーストラリアは、景況感と消費者信頼感の回復が顕著にみられ、資源価格の上昇も加わって、先進国の中でも回復ピッチが加速している。資源通貨と位置付けられているカナダドルやオーストラリアドルは、上昇トレンドが鮮明になってきている。

カナダ経済はいち早く回復へ

カナダも、新型コロナウイルスの感染拡大による影響は避けられなかったが、カナダ政府が2020年1月以降に実施した財政支出はGDP比で14.6%に達する大規模なものだった。また、カナダ中銀(BOC)が実施した資産買入れプログラムによる量的緩和を進めたことにより、景気回復への道筋が見えてきた。BOCの最新の見通しでは、カナダの2021年の国内総生産(GDP)成長率は前年比6.5%と今年1月時点の4.0%から大幅に上方改定された。政策効果に加えて、資源価格の高騰がカナダ経済の先行きも通しを改善させた側面もある。

一方でBOCのバランスシートは急拡大し、保有資産はコロナ禍前の約3倍に増加した。米FRBでも、資産サイドの増加はコロナ禍前の2倍程度の拡大であるから、カナダ中銀の緩和策がどれほど大きかったかが想像できるだろう。これは、異常ともいえるほどの大規模な量的緩和である一方で、それだけの超緩和状態から正常化することには、大きな課題に直面するとみられてきた。

BOCは4月21日、先進国の先陣を切って資産買入れプログラムの規模を縮小することを決断した。いわゆるテーパリングに踏み切ったのである。英断と言って良いだろう。これにより、カナダドル金利の先高観と、他国に先んじた経済回復への信頼感はむしろ高まった。そのため、カナダドルは上昇に転じ、対円でも86円から90円に値を切り上げる動きになっている。

オーストラリア経済も景気回復の先頭集団に

オーストラリアは、感染拡大による行動制限により、経済的なダメージを受けたという点では、先進諸国と同じだが、感染対策には比較的成功した国と言えるだろう。大型財政予算を早期に組み、金融政策でも緩和策を早期に打ち出して、景気浮揚を図り、感染対策と経済復興を上手く舵取りした国である。企業の景況感や消費者信頼感の回復も早く、景気は速いピッチで回復に向かっている。

フライデンバーグ財務相が5月11日に示した2021年度(2021年7月から22年6月まで)の予算案では、歳出拡張的な予算を提示し、財政赤字幅は1,066億豪ドルに達するものだった。これは市場の予想を上回るもので、インフラ整備や高齢者ケアへの支出増加、減税が打ち出された。積極的に歳出を増やした背景には、遅くとも2022年には総選挙が実施される予定であることもあるだろう。加えて、資源価格が上昇していることも経済的なセンチメントを下支えしている。そのため、金利の上昇圧力が強まっており、この点では、米国に先んじているといえる。

このため、為替相場では、オーストラリアドルの上昇が目立ってきた。対円では、この1カ月では83円から85円だが、昨年11月から見れば75円から85円に上昇しており、上昇は目立っている。このトレンドは、カナダドル同様に継続するのではないか。

出口戦略が意識される展開も

異例な緩和からの出口戦略は、今年後半から来年にかけて、中央銀行と市場にとっての一大テーマである。それに既に着手した加ドルはもちろん、豪ドルは資源通貨としての資源価格の上昇による下支え効果も加わって、主要他通貨に対して上昇することが見込まれる。英国や米国も、テーパリングの動きに追随する立場になり、両通貨の金利上昇は、ポンドや米ドルの上昇要因になると推測されるが、少なくとも出口戦略で先行するカナダドルやオーストラリアドルは、上昇トレンドが続くと見ておいた方が良いだろう。