先進国市場

FOMCは量的な緩和政策の段階的縮小の議論へ

FOMCは量的な緩和政策の段階的縮小(いわゆるテーパリング)の議論へ

 

米連邦準備理事会(FRB)は15~16日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、金融政策は何らの変更もせず、現行通り維持した。

一方で、利上げを開始する時期について、これまで2023年末までは実施しないとしていた時期について、2023年中には利上げがあるとの見通しに変更した。そして、大量の資金を供給している現行の量的緩和政策について、いつどのように適切に開始するかを議論し始めたことを確認した。また、昨年来、米国経済のリスクファクターとして示していた新型コロナウイルス感染の拡大状況が経済に与える影響について、ワクチン接種などにより急速に改善しているとの認識により、これをFOMC声明から削除した。

 

パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、テーパリングについての討議をFOMCで開始したことを表明した。ただ、実際に政策を転換するかどうかについては、さらに著しい経済の進展が見られることが必要とコメントして、具体的に何がどのようになれば行動に移すのかガイダンスは示されなかった。

 

 

四半期景気・政策見通しは上方修正

 

FOMCに参加した18人の委員が示した最新の景気・政策見通しでは、前回3月の見通しから、失業率は2021年第4四半期に4.5%との予想は変わりなしだが、2022年第4四半期には3.8%に改善すると修正された(3月時点の予想は3.9%)。国内総生産(GDP)は2021年に年率7%増加と上方修正された(3月時点の予想は6.5%増)。市場が最も注目していたインフレ率に関連する予測では、個人消費支出(PCE)について、2021年に3.4%上昇すると、3月FOMC時点での2.4%上昇から上方修正した。ただ、2022年については2.1%上昇と3月時点の2.0%上昇からわずかな上方修正にとどまり、インフレ率の上昇は「一過性」とのこれまでの見方が踏襲された。

 

利上げについては、18人のうち13人が2023年末までに少なくとも1回の利上げがあると予想した。3月のFOMC時点では7人だったことから比べると過半数を上回った。うち11人は、2023年末までに少なくとも2回利上げがあると予想し、早ければ2022年中に利上げを見込んだ参加者も7人と、前回の4人から増加した(なお、1回の利上げ幅はいずれも0.25%の幅を前提としている)。ただ、パウエル議長は会見で、金利予測に関するドット・チャート(分布図)は割り引いて捉えるべきだと、利上げに関する議論を時期尚早と戒めた。

 

 

インフレ率上昇への警戒感強まる

 

パウエル議長の記者会見で筆者が注目したのは、経済活動の再開によって需要の増加は大きくなっており、生産財のボトルネックや労働力の確保における困難という制約要因が、製品などの供給を今後も制限する恐れがあり、価格の上昇(つまりインフレ)がFRBの予想を超える可能性を高めると説明した部分である。これは、4月5月の生産者物価指数や消費者物価指数の上昇で確認された、需要の拡大に供給がついて行けず、価格転嫁の動きが着実に広がっていることを警戒するということに他ならない。

 

また雇用市場についても、米国史上最長となった前回(新型コロナウイルス禍前の10年に及ぶ景気拡大期)の過程で、長期間、予想を超える拡大局面となったことを学んだと語ったことは注目したい。これは、労働力を求める企業側の需要が大きく、既に雇用のミスマッチが生じていることから、賃金が上昇するという現象がみられることを警戒しているということである。

 

いずれにしても、米国経済はFOMCが前回3月に予想していたよりも速いペースで回復している可能性を認めた。そしてこれは、FRBが金融政策を変更することに備えて討議を始めることを正当化するものである。パウエル議長は、今回のFOMC会合は、FRBの資産購入による量的な緩和政策の段階的縮小(いわゆるテーパリング)を議論することについて予備的に議論した会合だと、慎重な言い回しに終始したが、市場の受け止め方は、FRBが金融政策を引き締めに転換していく転換点と受け止めるだろう。

 

 

ドル金利上昇をメインシナリオに

 

FOMC会合後の発表を受けて、ニューヨーク市場では10年米国債利回りは、1.50%から1.58%と上昇した。1.50%は当面の下限となり、むしろ利回りは今年3月に利回りが急上昇した水準1.77%に向けて上昇圧力にさらされると予想する。為替相場でも米ドルが主要通貨に対して上昇し、ドル指数は約6週間ぶりの水準に上昇した。米ドルの金利がやはり先に上昇するとの見方に傾くことから、為替でも、ドルの堅調な動きが強まるだろう。ドル円は、111円が上限とこれまで予想してきたが、111円を上回り114円というシナリオも頭に入れておきたい。ユーロドルは、当面1ユーロ=1.20はユーロの下限とみてきたが、切り下げる展開に注意しておきたい。