市場予想

デルタ変異種は中国経済にも重しとなるか?

デルタ変異種の感染は中国でも拡大傾向へ

感染力がより強い新型コロナウイルス・デルタ変異種の感染再拡大は、中国でも影響が出始めている。中国は、2020年初めこそ、新型コロナウイルスの感染拡大に苦しんだが、その後は、散発的な感染はあったものの、拡大することは抑制して、迅速な封じ込め策を採ってきた。

 

中国流抑え込み策が効果を上げるか?

しかし、新型コロナウイルスの起源説もある武漢市で、8月2日に1年3カ月ぶりに新型コロナウイルスの市中感染者が見つかり、武漢市内の一部が封鎖された。無症状の5人を含む計8人の感染者が確認されたという。武漢市当局は約1,200万人の全市民を対象としたPCR検査を行うことを発表した。PCR検査によって感染者を洗い出し、一部地域では住民の移動を制限して、厳重な管理体制を敷き、徹底的に押さえ込むのが、中国当局のコロナ対策である。

武漢市に限らず、中国の他の都市でも、デルタ変異種の感染拡大は出ており、当局は警戒を強めている。過去2週間で、デルタ変異株の感染は、第1級行政区の半分近くで確認される状況になっており、住民に不要不急の旅行を避けるよう呼び掛けている都市は46都市に及ぶという。観光地閉鎖や文化イベント中止、旅客便の運休などの措置も採られ始めている。湖南省の景勝地、張家界の全ての観光拠点が閉鎖されたほか、同省の他の都市や、江蘇、山西両省の都市も観光地閉鎖の措置を取った。夏季休暇のシーズンのピークにもあたる8月の行動制限は、観光業や消費に悪影響を及ぼす可能性もある。昨年春以降で最も厳しい行動制限とロックダウンなどの厳格な措置は、景気へのダウンサイドリスクとなりかねない。一部シンクタンクやエコノミストの中には、中国経済の第3~第4四半期・国内総生産(GDP)成長率を下方修正するよう見直す動きもあるようだ。

 

経済のダウンサイドリスクに

7月31日に中国国家統計局が発表した7月の製造業購買担当者指数(PMI)は50.4と、6月の50.9から低下した。財新・マークイットが8月2日に発表した7月製造業PMIも50.3で6月の51.3から低下と、足元の軟化を示している。もともと、今回の景気回復局面は、財政出動による当局の下支え策の恩恵に預かる大企業に対して、中小企業は厳しい状況が続いていた。7月中旬に人民銀行は市中銀行の預金準備率の引き下げを実施して、貸出金利の低下を促したが、預金準備率を再び引き下げることも一部で予想する声が出ている。また、先の中国共産党政治局会議で示されたように、中小企業への的を絞った財政支援策を拡充するなどの措置が検討されることも取りざたされている。他にも、政治局は、地方政府の特別債発行を通じた財政支出を年後半に増やすことも検討しているという。

当局の緩和寄りのスタンスと景気のペースダウン見込みを受けて、今週の中国国債相場は上昇し、利回りは低下した。10年債利回りは2.8%と、2020年6月以来の低水準に下げている。景気のダウンサイドを織り込む展開となると、為替相場での人民元の一段の軟化はありうるだろう。また、そうなると株価の調整色は色濃くなるだろう。8月は中国市場に注意を払うべき展開となるかもしれない。