アジア市場

緊迫する中国恒大債務問題~中国人民銀行は大規模な資金供給を実施

今年2月以来最大の大規模な資金供給を実施(9月17日)

9月17日の中国短期金融市場では、中国人民銀行が、7日物と14日物のリバースレポ(債券買いオペレーション)で、各500億元(約8500億円)を資金供給した。17日に期日が到来する100億元を差し引くと900億元(約1兆5000億円)を銀行間市場に供給したことになる。9月に入って、1日当たりの資金供給額が100億元を超えるのは17日が初めてで、今年2月以来の規模の資金供給であることから見ても、大規模な資金供給だったことが理解いただけるだろう。

人民銀行は表向き、来週にかけて中秋節の連休があることや、9月末の四半期末を越えるための季節的な資金需要が見込まれるため、金融システムへの短期資金供給を増やしたという体を取っている。中国の場合は、10月初めの国慶節(建国記念日)を挟んで、大型連休が控えていることも、市場での資金ひっ迫要因で、流動性は不足する傾向にある。表向きの理由はそうだが、来週ヤマ場を迎えると言われる不動産開発大手・中国恒大集団の債務危機問題に配慮した流動性の供給という側面もある。どの国でも、債務危機などが発生する際には、こうした資金供給を行うことが通例で、資金市場における資金の逼迫や市場の緊張を緩和する狙いがある。筆者も、東京やニューヨークで資金繰りを担当している頃は、そうした中央銀行のオペレーションに触れたものである。

ただ、17日の大規模な資金供給にもかかわらず、銀行間取引の7日物金利は0.12%上昇して2.39%に上昇し、今年7月以来の高水準となった。市場参加者である市中銀行は、来週起こりうる事態に備えて、資金が不足しないよう、資金手当てをして、慎重に期末を迎える体制に入っている。

中国恒大は9月23日に2022年3月償還の債券の利払い8,350万ドル、29日にも2024年3月償還の債券の利払い4,750万ドルを控えている。30日以内に利払いができなければ、デフォルト(債務不履行)とされるが、その期限までに、債務の減免や組替えが合意されるかが注目される。中国恒大の発行した社債の海外保有者団は、来週、未払いが発生した場合にドル建債を中心とした債務再編を進めるため、既に投資銀行と法律事務所をアドバイザーに選定したと報じられた。

17日の市場は一息ついたが、ヤマ場は来週から

17日の中国株式市場は、中秋節の祝日を控えて売り控えられたことや、人民銀行の資金供給により16日の引けからは反発して取引を終えた。生活必需品やヘルスケア関連の銘柄が上昇した。前日までは中国恒大の債務問題を嫌気して続落していた不動産株にも、バーゲンハンティングの買いで前日比2%近く上昇した。CSI300指数は、前日比1.00%高の4,855.94、上海総合指数終値は同0.19%高の3,613.97で引けた。ただ、週足では、それぞれ3.1%安、2.4%安で8月20日以来の大幅な下げとなった。

香港株式市場もハイテク銘柄やヘルスケア銘柄が反発、ハンセン株価指数は前日比1.03%高の24,920.76で引けた。ハンセン中国企業株指数(H株指数)も反発し、終値は同1.53%高の8,940.47だった。しかし、週足ではハンセン指数が前週末比4.9%安、H株指数は同4.8%安で、両指数とも8月20日以来の値幅で下げた。

冷ややかな中国政府の態度

一方で中国恒大には、引き続き厳しい見方が広がった。17日の取引は、中国恒大株は2.54で引けた。前日16日には2011年10月以来の安値2.30をつけていたが、その安値からはやや買い戻しがあった。2023年10月償還の同社債は16.125セント(額面100に対して16.125)まで下げた。既に、ディストレスト債の様相を呈している。中国恒大に最大の債権を持つとされる中国民生銀行の株価は4.6%下落し、上場来安値2.86で引けた。

中国恒大の債務危機は、中国国内の不動産市場に影響を与えるだけでなく、中国経済全体に
波及しうることが懸念される。資本市場では、クレジット市場、特に低格付けのハイイールド債券に大きく影響するだろう。ただ、中国国営メディアである「環球時報」の胡編集長は16日に、中国恒大集団は「大きすぎてつぶせない企業」(too big to fail) ではないとし、政府の救済を当てにせず、市場の手段を活用して自力で立て直しを図るべきとコメントした。また、中国恒大が仮に破産したとしてもリーマン・ブラザーズが破綻した時のように、システミックな金融混乱を引き起こすことはないと述べた。この辺りは、中国政府の冷ややかな態度を反映していると言えるだろう。来週からの債務再編交渉を中止せざるを得ない。