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高値更新が続く米国株式市場だが・・・

高値更新が続く米国株式市場だが・・・

8月16日の米国株式相場では、S&P500指数が続伸し、最高値更新を継続した。これで先週から5営業日続伸となった。因みに、新型コロナウイルスの感染拡大の悪影響を懸念して急落した昨年2020年3月の安値からの反騰・上昇で、同指数は2倍に達した。米国経済は、旺盛な需要を背景に、生産関連統計は高水準を維持、雇用統計も改善を継続し、第2四半期企業決算も良好である。株式相場を支援する材料に後押しされて、循環物色的な相場となっている。

一方で、インフレ指標の上昇は、米FRBの金融緩和姿勢を転換させる、いわゆるテーパリングが早い時期に開始されることへの警戒感と、それによる株式市場からの資金流出が懸念される。実際に、市場はパウエルFRB議長をはじめとするFRB高官の発するシグナルを読み取ろうと構えている。また、8月26日からカンザスシティー連銀がワイオミング州ジャクソンホールで主催する年次シンポジウムにも注目している。このシンポジウムで、債券購入プログラムの段階的縮小を開始する時期や縮小計画の概要が示されるとみる参加者もいる。

デルタ変異種の影響から消費者信頼感指数は悪化

加えて、材料として読み切れないのが新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大の影響である。2020年3月の相場の急変も、中国の病気と対岸の火事を眺めるかのように構えていた市場が、感染の拡大を受けて世界的な危機への変化に驚いて起きたことだった。デルタ変異種の感染拡大が、世界的に広がる中、米国だけが例外とは言い切れない。

実際のところ、8月13日に米ミシガン大学が発表した消費者信頼感指数(8月速報値)は70.2だった。2011年以来、約10年ぶりの低水準である。7月の確報値である81.2からは大幅な低下で、前月並みの水準を予想していた市場にとっては、ネガティブ・サプライズとなった。現況指数は77.9で、7月の84.5から低下。期待指数も65.2と、7月の79.0から大幅に低下した。期待インフレ率は1年先が4.6%と、7月の4.7%から小幅に低下した。一方、5年先は3.0%で、7月の2.8%から上昇した。

8月の消費者信頼感指数の悪化は、新型コロナウイルスのデルタ変異種による感染拡大が想定以上に経済の足を引っ張る可能性を示唆している。米国経済は今年第1・第2四半期と高い成長率を記録し、年間を通しても40年ぶりの高い成長率を達成することが予想されているが、感染力の高いデルタ変異株による影響が拡大し、経済回復ペースが鈍化するシナリオは有り得る。8月の消費者信頼感指数の急低下は、その兆しとの見方も出ている。

考えられる3つのシナリオ

インフレ率の上昇も気がかりなもう一つの材料である。8月11日に発表された米国消費者物価指数(7月)は、前年同月比では5.4%上昇だった。サプライチェーンの混乱が続いていることや、旺盛な消費需要により、インフレ率は高い水準にとどまっていることが示された。ただ、7月は前月比では0.5%上昇にとどまり、6月の同0.9%上昇からは鈍化したことで、インフレ率の上昇圧力がピークアウトした可能性に市場は注目した。ただ、筆者は、前月比の数値だけを見るのは間違いであると考えている。前年の反動増という要因は、薄まってきており、そんな中で、前年同月比で5%を上回る物価上昇率にあることは重い事実である。

米国経済指標から考えられるシナリオとしては、次の3つが挙げられるだろう。
① 経済回復ぺースは衰えず、インフレ率はFRB高官の説くように、一時的な上昇はするものの、抑制可能で、金融緩和策の終焉を早期に懸念することなく、良好な状態が続く。
② 経済回復ペースを維持するが、インフレ率の高止まりが、FRBによる早期金融緩和策の終了を促し、そのことが経済の成長ペースを弱める。
③ 新型コロナウイルスの変異種感染拡大の影響が濃くなり、再び行動制限などを伴った措置が取られることで、消費や投資が落ち込み、経済回復シナリオに狂いが生じる。

この中で、市場では、②のシナリオの可能性を低く見るほうに傾いている。先週金曜日の動きからは、③を警戒する方にシフトしていると言えるだろう。8月も半分が過ぎ、夏休み気分が色濃い市場だが、米国のインフレ率は高止まりしている一方で、インフレへの警戒感は高まらないという奇妙な現象に加えて、新型コロナウイルス・変異種の感染拡大により、消費者信頼感などは悪化しており、景気回復の先行きは見通せない。

繰り返しとなるが、8月26日からのジャクソンホール・年次経済シンポジウム、9月3日に発表される米国雇用統計(8月)と9月22日から開催される連邦公開市場委員会(FOMC)と8月後半から9月の相場も気を抜かずに警戒感をもって臨みたいと考えている。