先進国市場

超金融緩和政策の遺物~中央銀行のバランスシート

日銀のバランスシートは、過去8年で4倍

日本銀行は、5月27日に2021年3月期決算を発表した。2020年春以降の新型コロナウイルスの感染拡大による経済への悪影響を抑えるために、日銀が、大規模な資産買い入れによる量的な金融緩和を拡大したことで、日銀のバランスシートは、一段と膨張した。日銀の発表によると、総資産は、前年同期比で18.2%増加し、714兆5,566億円となった。黒田東彦総裁の下、2013年4月に大規模な金融緩和策を開始する直前の2013年3月末の決算では、総資産は164兆円に過ぎなかった。過去8年間でなんと4倍以上に膨張したことになる。

GDP比では突出して高い比率の日銀のバランスシート

714兆円という規模は、2020年度の日本の名目国内総生産(GDP=535兆円)比では、約1.3倍である。ちなみに、FRBのバランスシートは2021年3月末で7.68兆ドルである。FRBも、2020年3月から金融機関や民間企業の資金調達を支援するために金利を引き下げ、資産買い入れ規模を増やして、緊急避難的な資金供給を急増させたために、バランスシートは膨らんだ。2020年初めには、FRBの総資産は約4.1兆ドルだったので、約1年で90%近く急増したことがわかる。ECBも同様の金融緩和政策を採って資産を膨らませた。しかし、先進国の中央銀行の資産のGDP比率でみると日銀が突出して大きいことがわかる。

資産の内容にも、日銀の政策の特徴が反映されている。保有する国債は前年比で9.5%増加の532兆1652億円だが、日銀はETFも購入しており保有残高は35兆8,796億円に達する。このETFの含み益は、3月末時点で15兆円超となり過去最大を記録した。他の中央銀行は、一部の例外的な保有以外には、株式を資産として保有していることはない。

超金融緩和政策の遺産を正常化するには長い時間が必要

新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済に壊滅的な打撃を与え、その影響を軽減するために、世界的に大規模な金融緩和政策が2020年には実施された。しかし、これにより膨らんだ中央銀行のバランスシートは、金融緩和政策の終焉と共に縮小に向かうことになる。ただ、FRBの最新の報告書によると、FRBのバランスシートは2030年までに最大9兆ドル近くまで拡大する可能性があり、仮に2023年に引き締めに転じても、6.6兆ドルまで減少するとの見通しが示されており、案外、バランスシートの縮小は急には起こらないことが示された。超金融緩和政策の遺産を正常化するには、相当に長い年月が必要になることが、中央銀行のバランスシートからもうかがわれる。