先進国市場

米国消費者物価統計(4月)も、事前予想を大きく裏切った現実

米国雇用統計に続き、米国消費者物価統計も、予想を大きく裏切ったという現実。

5月12日に米国労働省が発表した消費者物価指数CPI(4月)は、総合CPIは前月比0.8%上昇、前年同月比では4.2%もの大幅な上昇を示した。これは、2008年以来の大幅な伸び率で市場予想も大幅に上回った。
変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比0.9%上昇とこちらも1982年以来の大きな伸びで、事前予想だった同0.3%上昇を大幅に上回った。前年同月比では3.0%上昇だった。

CPIの上昇幅が大きくなった理由の一つは、需要が増加していることであることは間違いない。卸売物価指数PPIは3月でも上昇しており、需要と供給のひっ迫から、卸売段階では既に価格転嫁が起こり始めていることを示していた。4月CPIの上昇は、それが消費者段階にも及びつつあり、企業がコスト上昇分を消費者に転嫁する段階に入ってきている可能性を示唆している。

更に、労働統計局によると、指数の上昇が目立った理由としては、中古車の価格上昇を挙げた。4月単月で10%上昇したという。4月CPIの前月比上昇率への寄与の3分の1余りを占める上昇だった。理由としては、半導体の供給不足で新車の生産が滞る一方で、需要は拡大しており、欲しくても手に入らないという逼迫状況が生まれていることがある。新車市場から追い出される形となった消費者やレンタカー会社が、中古車市場で調達する苦肉の策に出ており、実際、中古自動車オークションでの卸売価格指標は急上昇しており、4月に前年同月比54%上昇したという。ただ、市場のほとんどは、自動車価格上昇が一時的なものとなる公算が大きいと見ている。新型コロナウイルス禍で、公共交通機関の利用に対する慎重な姿勢が自動車による移動を増加させたことが、需要を拡大させた理由だが、こうした傾向は、ワクチン接種が急速に進む中で、今後数カ月で弱まる可能性を指摘している。

テクニカルな要因もある。1年前の4月は、パンデミックの影響から、行動抑制措置が実施され、物価指標が急落していた。このため、前年同月比の比較に大きな歪みが生じたことは間違いない。この現象は次回5月のCPI統計でも影響が予想される。このため、数値だけでインフレの現状を議論することはできず、FRBの政策判断を難しくするだろう。

従来の経済モデルでは予測できない現状

新型コロナウイルスの世界的流行は、世界経済に壊滅的な打撃を与えた。サプライチェーンはズタズタに分断され、雇用は失われ、失業者が街にあふれた。しかし、先進国は未曽有の大規模な政策発動と経済活動再開へ舵を切って、経済は急速に回復に向かっている。需要は急増する一方で、サプライチェーンの再構築は間に合わず生産は追いついていかない。現状、世界経済は、前例のない環境に置かれている。平時のような景気循環とは言い難く、第二次世界大戦期のように、物資が大幅に不足し、流通や購入に大きな制約要因があったころに似ているという指摘の方が的を得ているかもしれない。そのため、予測をはじき出す従来のモデルは、機能していないと考えるべきだろう。

そうなると、市場参加者は、相場の不意の変動に身構えざるを得ない。当面、神経質な展開が続き、本格的なリスクオン相場からは変容するのではないか。当局者、特に米FRBは、インフレの実態をどう判定していくか、頭を悩ませることになるだろう。そして、それだけ、金融政策の判断も難しくなる。