アジア市場

債務問題に喘ぐ中国恒大集団が破綻の危機に

デフォルト寸前

前稿では、中国経済の変調について書いたが、今週は、債券市場で注目されていた高債務企業の処理を巡って、ニュースが飛び交っている。中国政府は、不動産関連企業や環境問題に前向きではない企業の救済に対しては冷ややかな態度をとってきた。多額の債務を抱える問題企業に対しては、淘汰の圧力は続くことが予想されてはいたが、最も注目され、中国最大の不動産開発会社である中国恒大集団が債務危機から破綻の危機に瀕している。

中国恒大は、9月に入って資金繰り難に陥り、デフォルト(債務不履行)の観測が出ていた。中国政府は、中国恒大に銀行など債務者団との債務条件の再交渉を認めたことは報じられていたが、債権者団との交渉はめどが立たず、デフォルト寸前と伝わってきている。

中国恒大集団は、債権者に加えて、販売した住宅の購入者や個人投資家からも、激しく抗議を受けている。経済紙・財新が報じたところでは、住宅購入者で物件の引き渡しを受けていない人たちが、建設再開を訴えて、中国恒大や住宅当局を一時包囲した。9月12日には、深圳にある中国恒大のオフィスに、理財商品(WMP)の返金を求める数百人の個人投資家が詰めかけ、翌13日夜には警察が出動する事態となった。同社の従業員にも、同様に中国恒大のWMPを購入した者は多く、先週末には、抗議運動が起こって、同社はそれらの従業員に在宅勤務を指示した。中国当局は、中国恒大の債務危機が社会不安につながらないか注視しているという。

中国恒大は先週後半、WMPを保有する個人投資家に対して償還金の支払いを遅延させる支払い案を提示した。しかし、同案は、長期にわたって支払いを繰り延べるものだったため、現実的でないとして、かえって保有者は猛反発した。同社は、WMPを大量に発行して、主要な資金調達手段とし、債務比率を異常に高くする原因となっていた。同社は13日に、反発を和らげようと提案を微修正し、WMPの払い戻し案として、現金の分割払いか不動産での支払い、あるいは投資家が購入した住宅物件の支払残高からの相殺などを提示したという。

中国恒大は破綻のうわさを否定、一転、クロスデフォルト警告に

中国恒大は自社のウェブサイトに掲載した発表文の中で、破綻のうわさを否定した。そして、流動性の困難に直面している事実は認めながらも、企業としての責務を果たす決意であり、顧客利益を守るため可能な全てを行っていると説明した。

しかし、14日になると、中国恒大は、香港証券取引所への報告を公表し、同社の経営状態に関する懸念が、今月9月も不動産販売の大幅な減少を招いており、流動性が枯渇し、キャッシュフローが悪化する可能性が高いとの見通しを示した。さらに、子会社2社による第3者発行の9億3,400万元(1億4,500万ドル)相当の理財商品の保証義務を履行できなかったことも報告した。この結果、一つの債務がデフォルト(債務不履行)となった場合に他の債務もデフォルトとみなされる「クロスデフォルト」条項に該当し、同社の事業や財務状況に重大な悪影響をもたらす可能性がある警告とした。

このため、14日の香港市場で、中国恒大の株価は急落した。上海証券取引所でも、同社の上場債券の取引を一時停止する措置が採られた。市場は、中国恒大の債務再編交渉の行方を見守っている。交渉が決裂すれば、1兆9,700億元(3,050憶ドル)もの負債を抱える中国恒大は清算に追い込まれる。

グローバルに影響が及ぶ可能性も

中国で債務処理問題が顕在化することとなれば、中国債券市場は混乱し、中国経済にはダメージになることは、繰り返し指摘してきた。そして、それは、世界経済にも市場にも影響は避けられないだろう。

特に、新型コロナウイルスの感染対応に一周遅れで苦しんでいる新興国経済にとっては、厳しい状況になることが予想される。8月の中国経済統計の悪化に加えて、中国恒大のデフォルト問題が深刻化した場合は、市場のボラティリティを高めるトリガーとなる。引き続き、しっかりと警戒すべきである。