依然として不透明な先行き
今後の展開を見通すことは難しい状況が続きそうである。関税カードは相変わらず、読みづらい。トランプ大統領は8月1日に、スイスからの輸入品に39%の関税を課すと発表した。スイスといえば、ロレックスやスウォッチなど「高級時計」が主な輸出品で、時計への関税不可もスイス経済にとっては痛手だが、トランプ大統領が、大手製薬会社にも薬価引き下げを迫ったことがより注目されている。医薬品は現時点では、関税の対象外となっているが、ロシュの米子会社ジェネンテックとノバルティスは、先週トランプ大統領から薬価引き下げを求める書簡を受け取った。今後、医薬品に関税が適用されるのか不透明で、これが、心理的にも問題となるだろう。
地政学的リスクでは、ロシアのメドベージェフ氏との口論に端を発して、トランプ大統領が、ロシアの脅威を指摘、原子力潜水艦2隻を「適切な海域」に配備するよう命じたと明らかにした。8日までの停戦を求めるトランプ大統領は、インドにも、ロシア産原油の購入停止を迫って関税カードをちらつかせており、今週の市場では一段とリスク回避ムードが強まる可能性もあろう。
米国経済に目を転じると、雇用統計サプライズをきっかけに、今後数カ月以内に雇用市場が大きく変化し、雇用者数が減少に転じる可能性なども取り沙汰され始めている。7月の米ISM製造業指数も、9カ月ぶりの水準に低下しており、リセッションへの懸念を強める材料がここに来て目立つ点も懸念材料である。
7月までは、事前予想を上回る企業決算と堅調な経済データを背景に、米国株は他市場の株式をオーバーパフォーマンスしていた。株価指標からは過熱気味が示唆されていたが、そのバリュエーションには注目が集まらず、米国株市場の参加者には、過度な楽観論者が多かった。しかし、関税や政策から影響を受け、米国経済の足取りは心もとなくなり始めている。そして、財政赤字、通商政策や関税、物価の上昇圧力といったリスク要因は引き続き存在している。低位で推移していたボラティリティは、一気に高まり、シカゴ・オプション取引所のボラティリティー指数(VIX) は20を上回ったことは、これまでの楽観論からの反動を示唆するのではないか。先行きには大きなリスクが控えているのではないか。