
核問題は未解決のまま
2025年6月24日、トランプ米大統領は、イスラエルとイランの間での停戦の発効を発表した。SNSでは、関係国に、停戦合意を順守し反故にしないよう、「Please do not violate it!」と警告した。
12日に、イスラエルがイランの軍事施設に先行して攻撃を加えてから、イスラエルとイランの間では、軍事的な衝突が続いていた。この間、米国はイランの核関連施設を空爆し、イランは報復としてカタールにある米国基地にミサイルを発射した。米国が紛争の当事者となったことで、中東情勢の緊張が深刻化することが懸念されたが、今回、トランプ大統領が仲介して、イランが攻撃を停止し、イスラエルがこれを受け入れる形で停戦に合意した模様である。両国とも、相手方への攻撃で一定の成果を得たことを強調した。しかし、双方に被害が出たことは事実である
経済への影響では、原油価格への影響が最も大きい。停戦の成立で、原油価格は大幅に反落し、WTI原油先物は一時前日比6%安となる1バレル=64ドル台まで下げた。
中東情勢の緊張緩和に加えて、トランプ大統領が停戦合意を受けて、中国がイランからの原油購入について、継続することを容認する発言をしたことも原油価格を押し下げた。米国にとっては、イランへの経済政策の根幹でもあった石油の供給が許されるようになれば、経済的には大きな支援になる。また、石油の供給が増加することになり、インフレ圧力の緩和にはプラスとなろう。
株式市場はポジティブに反応した。イスラエルとイランの停戦を受けて、S&P500指数先物は時間外取引で前日比0.4%上昇、東京株式市場とシドニー株式市場も堅調に推移していたが、米国時間の取引でも続伸し、S&P500指数は前日比1.1%高い6,092.18で取引を終えた。ダウ平均も同1.19%高い43,089.02、ナスダック総合指数も同1.43%高の19,912.53で引けた。
為替市場では、パウエル議長が、インフレ圧力後退なら利下げ可能との発言が伝わると、米ドル金利の低下観測が台頭し、ドルが主要通貨に対し軟調となった。
金相場も停戦の報道から大幅に下げ、金現物価格は一時2.2%下落、1オンス=3,295.62ドルをつけた。一日の下げとしては5月16日以来の下げ幅だったが、前日比51.82ドル(1.5%)安の1オンス=3,316.66ドルで取引を終えた。金先物8月限は同61.10ドル(1.8%)下落し、1オンス=3,333.90ドルで引けた。
ただ、今回、もっとも焦点となった核問題は、白黒が付いていない。イスラエルと米国は、イランのウラン備蓄や核開発の能力を断つこと目的にしていたが、米軍の攻撃で、それらが破壊されたのか、その能力が断たれたのかは、定かではない。イランは、あくまで、民生用に核開発能力を持つとの主張を繰り返している。