
三村財務官も日銀首脳のメッセージに『齟齬なし』
2月27日、日本の債券市場では日本国債が売り込まれ、長期金利の指標である10年ものの利回りが1.405%まで上昇した。
このところ、市場では日銀による追加利上げ実施への警戒感が強まっている。日銀首脳の金融引き締めに前向きな発言に加えて、物価の上昇に歯止めがかかっていないことを受けて、金利上昇の流れが続いている。
日本銀行が2月26日に発表した消費者物価・コア3指標『基調的なインフレ率を捕捉するための指標』は、揃って前月から拡大した。特に、将来の予測に有効とされている「刈り込み平均値」の1月の伸び率は前年比で2.2%上昇となり、昨年3月に記録した同2.2%上昇以来の高い伸びとなった。前月は同1.9%上昇だった。
価格上昇率の高い順にウエートを累積して50%付近にある価格変化率の「加重中央値」は1.4%上昇となり、昨年6月以来の高い伸びだった。品目別価格変動分布で最も頻度の高い価格変化率を示す「最頻値」も1.3%上昇した。
加えて、27日は、三村淳財務官からも、日本銀行の金融政策に対するコメントが出た。三村財務官は、日銀から出されている金融政策の今後の見通しについてのメッセージは、経済状況を踏まえているとの認識を示し、自分自身も「基本的に齟齬はない」と受け止めていると述べた。これを契機に、政府も日銀による早期追加利上げの実施に異を唱えず、利上げをしやすい環境が醸成されつつあるとの受け止め方が強まった。
実は『円安阻止』が一番の鍵か
筆者は、為替が円安に過度に振れることによる物価上昇を警戒していると解釈している。植田総裁をはじめ日銀首脳の早期追加利上げの可能性への言及や三村財務官の金融政策に触れる言及は、そう大幅には金利を引き上げられる状況にない日銀の限られたカードを有効に使うための発言ではないかと考える。こうした発言により、円安の修正につながれば、無理に幅を伴った利上げに追い込まれることも回避できると考えているのではないだろうか。
債券相場では、21日には、植田日銀総裁が、国債買い入れ増額に言及したため、以降、長期金利は低下し、落ち着いていたものの、27日の三村財務官発言で、上昇に転じた。これに、同日、財務省が実施した2年日本国債入札が、応札倍率も低く、やや不調の結果となり、積極的な買い手不在を印象付けた。これにより、債券は一時下げ幅を拡大した。10年日本國債利回りは1.39%で取引を終えた。
外為市場では、ドル円は、円金利は上昇したが、トランプ米大統領の関税実施のコメントを受けてインフレ圧力の増大懸念を背景にドル金利も上昇したため、小幅な動きにとどまり、149円20銭台での取引が続いた。
株式は米エヌビディアの決算を受けて半導体関連株が買われて上げた。全般には小動きで、日経平均株価は前日比0.3%高の38,256.17円、TOPIXは前日比0.7%高の2736.25で引けた。