人民銀行は人民元下落に抵抗する意思を表示
1月6日、中国人民銀行は、人民元為替取引の基準レートを1ドル=7.1876元と、7. 2元より元高の水準に設定した。先週1月3日に、中国の景気停滞に対する懸念が強まったことや米国との国債利回り差の拡大を受けて、為替市場での取引では、1ドル=7.3190元まで人民元が下げて取引されており、中国人民銀行のスタンスが注目されていた。人民銀行は人民元を支える意思表示として、このところ基準レートを1ドル=7.2元よりも元高方向に設定してきた。6日もそれを踏襲し、7.2元よりも高いレートに設定したことで、元相場の下支えを続ける姿勢を示したと受け止められた。ちなみに、オンショア人民元の許容変動幅は中心レートから上下それぞれ2%に限定される。
人民元は、2023年に1ドル=7.3元を一時、超える元安を記録したことがある。しかし、この水準では、中国人民銀行が人民元安を防衛する意思を示したことから、守るべき水準、すなわち「レッドライン」と考えられてきた。実際に、2024年もそれを下回って下落することはなかった。ただ、中国経済は回復の糸口が見えず、金利差も、中国国債の利回りが低下し続ける一方で米国債は利回り水準を切り上げており、人民元には一段の下落圧力が生じかねない事態となっていた。10年中国国債利回りは、初めて1.6%を割り込む一方で、10年米国債利回りは4.61%と利回り水準の差は開いている。
ただ、中国経済のパフォーマンスが今ひとつであるということと、両国の国債利回り各祭が続く限り、対ドルでの人民元安圧力は避けられないだろう。ドルと人民元においては、相場の変動リスクは依然としてドル高の方向にある。トランプ次期米大統領は、中国の輸出品を対象に関税を追加して賦課する方針を示しており、予断は許さない状況である。人民銀は、元安の圧力を緩和させたいのだろうが、本格的な回復には、中国経済の見通しが改善することが不可欠になる。当面は、レッドラインを試す動きが続くのではないか。