世界各国で、新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が急速に拡大している。各国の対応は様々だが、ロックダウンのような強い行動制限措置は回避し、ワクチン接種により、一定の行動を容認するような傾向があるように見える。経済へのマイナスの影響を回避しながら、感染を封じ込めるのは無理でも、被害を最小化しようとする現実的な路線に見える。
【欧州】
感染の拡大が先行している欧州では、世界保健機関(WHO)が、12月21日に、「新たな嵐」が近づいているとして、欧州諸国に対し感染者の急増に備えるよう警告した。
イギリス全体では、オミクロン株の感染が拡大している。先週17日に新規感染者数は過去最多の93,045人を記録した。20日にも91,743人が報告された。ロンドンでは、感染による入院者数は1,819人で、1週間前の1,360人に比べて3割超も増えた。ジョンソン政権内では、制限を強化すべきとの主張と、市民生活を不合理な理由で不必要に干渉すべきではないとの意見が別れている模様で、英メディアも巻き込んで、追加規制措置が取られるかどうか話題は持ちきりである。
スコットランドでは、スタージョン首相が21日に、今月26日から3週間、大規模イベントを中止すると発表した。サッカーや大晦日の祝祭なども含まれるという。屋内の立席イベントは100人、着席イベントは200人、屋外イベントは500人までの規模にそれぞれ制限するという。
ドイツではショルツ新首相と国内16州の首相らが、今月28日から、新たな感染抑制策を導入することで合意した。ワクチン接種済みの人の集まりは最大10人に制限されるほか、サッカーの試合を含む大規模イベントは無観客での開催のみが許可される。
スウェーデンでは、国民に可能な限り在宅での勤務を推奨すると要請、ソーシャルディスタンシングの強化も実施するとした。
【オセアニア】
ニュージーランドでは、段階的な国境再開を予定していたが、来年2月末まで、そうした措置の開始を延期すると発表した。一方、オーストラリアは、オミクロン株の感染拡大対策として、行動制限で国民を縛ることから脱却する必要があると述べ、ロックダウン再導入の可能性を否定した。
【アメリカ】
アメリカでも、オミクロン株の感染は拡大している。バイデン米大統領は21日にオミクロン株への対応策を発表した。オミクロン株の感染が急速な広がっており、検査態勢が追いついていないことに対応するため、簡易検査キット5億個を無償で配布するほか、ニューヨーク市などに連邦政府の検査施設を設置する対策を発表した。軍の医療関係者を約1,000人動員して、医療機関の支援も行うという。
バイデン政権には、経済や学校をシャットダウンする意向はないように見受けられる。バイデン大統領の演説でも、パニックに陥るような状況ではなく、冷静に行動するよう呼びかけるにとどめている。国民に対し、ワクチンを接種しないことの危険性について強く警告しながら、ワクチン接種済みであればクリスマス休暇の計画を諦める必要はないと述べた。方針としては、新型コロナウイルスの感染症と、共存する道を探るという現実的な路線を打ち出したようである。
年末年始の薄商いの状況で、感染状況が深刻化するニュースが出てくることには警戒を怠ることはできないが、主要国の当局が、現実的な対応策で乗り切ろうとする間は、金融市場に与える影響は、小さいのではないだろうか。